10月28日、SBI証券の実施する”まるっと米国”ブロガーミーティングに参加しました。
本イベントは、SBIアセットマネジメントの設定するSBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)につき、SBIアセットマネジメントの梅本賢一社長が解説・質疑応答するものです。 コロナ禍もあり、会場セミナーに参加できたのはずいぶん久しぶりとなりました。
セミナー内容について簡単にまとめておきます。
設定来の推移について 設定来の推移をみると、以下のように、ドル換算での指数・基準価額が下落しているのに対し円ベースだとやや上昇している。もちろん、円安でのメリットを受けていることによる。

為替や株式指数に関連して、業界の関心事は「黒田日銀がいつ利上げするか?」が最大となっている。 潜在的な経済的成長力の強い国でないと指数が伸びない。そういう観点からすると米国を選ぶことになる。 為替についても金利が高い国・経済力が強い国の通貨が買われることが自然であることから、長期的には米ドル高・円安の方向性が自然。 そういったところを考えると、日本人も海外資産を持ったほうが良いという風に思っている。
指数が伸びる伸びないが潜在的成長力に依存するのかどうかは議論のあるところではあります(成長力が低ければ低いなりに織り込んだうえで指数が形成されるから、それなりに上昇は可能、という論者もいる) また為替も金利のほか物価などのファクターもあり、円安方向と決めつけるのは躊躇を覚えるところです。 とはいえ、海外資産を持ったほうがいいという結論自体はその通りだと思いますが。
分散効果について 設定来の米国株式と米国債券の指数の推移を見ると、逆相関の度合いは弱いものの値動きは異なっている。そのため、本ファンドは分散投資の効果を発揮できており、長期投資に適したものになっていると考える。(バックデータになるが、2012年10月から2022年9月まで本ファンドと同様の運用で毎月3万円積み立てたとすると、積立総額360万円に対して残高627万円となる)

なお、株式と債券との相関係数が上がっており、分散投資の効果に疑問が呈されることがあある(足元では米国株式と米国債券との相関係数0.53)。 しかし、2002年10月から2022年9月までの20年で見た時の米国債券総合指数との相関係数はS&P500が0.13、MSCIエマージングが0.17という水準であり(S&Pのほうが相関係数が低い)、長期的には連動性の低い水準に回帰していくことになるのではないか。
市況見通しについて 米国の長短金利差が縮小・逆転すると景気後退が近いというのは過去にもみられている。 米国10年国債利回りと2年国債の利回りの差がマイナス(2年国債のほうが高い)となった事例は1985年以降で3回あったが、いずれも間もなく景気後退が訪れている(1989年3月マイナス0.39%→12月日本バブル崩壊→90年7月~91年3月後退、2000年4月マイナス0.48%→12月インターネットバブル崩壊→01年3月~11月後退、2007年1月マイナス0.15%→08年9月リーマンショック→07年12月~09年6月後退)。 2022年9月~10月にはこれらよりも深いマイナスになっており、景気後退は近いうちに必ず来る。 足元、米国では住宅ローンの金利が高い水準にあり、こういう状況の時はしばらくして住宅投資が落ち込む傾向がある。住宅はCPI寄与度の中で大きなウエイトを占めることから、これにより物価下落要因となると思われる。そうすると、利下げが可能になる状況が近いのではなかろうか? 現在の株式市場を見ると、決算の悪い銘柄が大きく下落する「逆業績相場」とでもいうべき状況にある。こうなると、順序としては次に来るのは利下げによる金融相場。おそらく先進国の中で利下げが一番早いのも米国になるのかも? そして利下げとなれば債券価格にもプラスなので、「まるっと米国」にもかなり有利な市況が来るといえるのではないか。
市場見通しが当たるかどうかは特にコメントする気はありません(的を射たコメントができるとも自認していません)。ただ、相応に説得的な根拠はあり興味深いものではありました。 もっとも、長期投資への利用を念頭に置いたアピールをしておきながら、(逆)業績相場だの金融相場だのという短いサイクルの話で有利不利を論じるのは整合性としてどうなのだろうか、という気もしなくはありませんが……
質疑応答 Q:新興国投資に対する考え方 A:人口ボーナスの考え方を重視。人口の増加している国は成長性が期待できる(アメリカにしてもイギリスにしても移民政策を取って人口を増やしている)。その上で、時価総額(小さすぎると投資できない)や一人当たりGDP(成長性が残っている=あまり現時点でのGDPが大きすぎない)などでスクリーニングすると4か国程度に絞られる。その中ではインドに注目している。
Q:SBIアセットは低コスト商品を提供している印象がある。利益度外視の理念があるということ? A:あるといえばある。インデックスファンドであれば低コストであるほど「指数そのまま」のパフォーマンスを実現できる(基本的にコスト分だけ指数と差がつくのがインデックスファンドだから)。そういう商品を届けることが重要だと思っている。
Q:アクティブファンドとしてこれから伸びるのは。 A:日本株であれば、jnextという中小型成長株のファンドが今は良いのではないかと思っている。国内中小型株というのはあまり注目されていないが(値上がりしたときに持ち上げられる傾向がある)、組入上位銘柄を見てもあまり知られていないマイナー銘柄を仕込んでいる。
値上がりしてから持ち上げられるというのはファンドあるあるですよね…… それはそうと、推しは ジェイリバイブではないんですね。
Q:SBI V S&P500ではファンド内でレンディング(貸株)をやろうと思っているような話があったと思うが、その後どうなった? A:準備は進めている。ただ、まだやっていない。やはりやる以上はファンドに利益が出るようにしたいが、他ファンドが普通にやっているようなスキームでは利幅が小さい。貸株に伴う担保のやり取りの方法を変えることで利幅が変わる一因になるので、その辺を変えつつ実行に向けて動いている。
Q:まるっと米国はなぜバンガードではなくiシェアーズなのか? A::運用の指数との連動性、コスト面など商品としての機能ではバンガードにもiシェアーズにも差はほぼない。そのうえでiシェアーズと組んだのは、間口を広げる考えから。 iシェアーズは世界最大の純資産残高があり、商品もバラエティに富んでいる。いろいろな商品開発の可能性がある。 また、バンガードが日本撤退したことにより、情報が今までに比べて取りにくくなったという面もある。 今後、iシェアーズと組んだ商品を出すことも議論を続けている。
私の質問でした。 iシェアーズにはスマートベータ系も含めてバラエティが豊富ですから、個性的な商品はバンガードより出しやすいでしょう(スマートベータがいうほど良いものかどうかも議論あるところですが) もともとEXE-iや雪だるまシリーズなどでは特にETFのブランドにこだわりはなかったはずですから、そのような姿勢に戻っただけと思えば大してドラスティックな変化でもないのかもしれません。 仮にステートストリート(SPDR)にメリットを見出せばそちらと組んだ商品の開発も普通にあるかもしれませんね。 それにしても、バンガードの撤退による(バンガード自身にとっての)悪影響が早速出てきましたね……
Q:emaxis slimに勝てる? A:まるっとお米国との関係では、slim側ではバランスファンドつながりで8資産均等あたりをイメージされてるだろうか? パフォーマンスでは現時点では勝っているが…。 実のところ、米国株式+米国債券を半々でというのはslimを含むバランスファンド界でも当ファンドが初めてのようだ。 そのうえで、投資家に選ばれる商品になれるかどうかというのが勝った負けたということになろうか。そのためには、「何故運用成績が良く(悪く)なったのか?」ということがきちんと説明・理解しやすい商品であるかどうかというのが重要。
Q:販売会社がSBI証券しかないが、他社に広げる考えは? A:広げたいとは思っている。また、他の販売会社からも問い合わせを受けてはいるが……
なにぶんSBI証券主催のセミナーなので、SBI証券の司会者のほうを窺うなどちょっと面白かったですw 楽天バンガードは早い段階で楽天証券以外での取り扱いがあって現在も相当のシェアをとれていますし、やはり間口を広げることは重要だと思います。 さらに、長らくみずほ銀行・みずほ証券での専売(低コストインデックス投信に関心の高い顧客が多いネット証券での扱いがない)が続いて鳴かず飛ばずの有様になってしまったi-mizuhoシリーズの経験を持つブラックロックとしても、再びその轍を踏むわけにも行かないでしょうから、いつまでもSBI証券専売ということは許してもらえるかどうか。
Q:比率を半々と決め、機械的にリバランスしていくことのメリットは? ファンドマネージャーが見通しを立てて比率を決めていくのと比べてどうか? A:人の分析の手間が入らないことそのものがメリットになる。分析するコストの問題もあるし、分析したことが当たる当たらないの問題もある。 また、過去のパフォーマンスの提示(先に出した、過去10年積み立てしていたら…のような)も容易。仮に人の分析を入れる設計だと、過去のどの時点でどういう判断をしたか、かなり恣意的な仮定をすることになりかねないので、適正なパフォーマンス提示ができないだろう。
こと相場に対して人の予測判断が当たる当たらないはかなり怪しいところですから、まあ、納得しかないところです。 他にリスクが高まってきたら債券や短期金融資産を増やして…のような、おそらく定量的なデータを基にして資産配分を変えているのであろうファンドもありますが、そういうファンドもコロナショックの時などに底の付近で株式を全売却してしまって回復相場に乗れない…などの憂き目を見ていたり、碌な結果を出しているイメージがありませんし、やはり最初の段階で資産配分をきっちり決めておいてそれを守る形にしておいたほうが無難な印象はあります。
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