DCの受給時の税制について、再び議論になっています。
多額の退職金が支給される大手企業の社員や公務員にとって個人型確定拠出年金はそれほど得じゃない
このように、得なのかそうでもないのかという議論になるのは、DCの受給時の税制優遇が既存の税制に間借りしていることに原因があります。 一時金受給にせよ、年金受給にせよ、DCに特別の枠が与えられているわけではなく、あくまでも既存の「退職所得」や「公的年金」としての枠内で処理されるに過ぎないため、本来の退職金や公的年金の金額によっては優遇効果がかなり小さくなってしまうことによります。
私の場合、このまま今の会社に60歳の定年まで勤務したとすると、退職一時金が1600~1700万円(特にテーブルの見直しがなされず、私自身も退職金の増減をもたらす昇降格を今後一切しないとする)。 さらに、DCの積立金が現在の実績利回りのまま最後まで回ったとすると(現在年率5.8%程度ですから、リスク運用の利回りとしては高すぎず低すぎずといったところのはずです)、60歳到達時には残高が2000~2200万円程度。 退職一時金だけを受給するなら課税されないですみますが、同時にDCを一時金受給してしまうと200万円超(地方税込み)もの税負担になってしまいます。 なお、掛金の所得控除による減税分を再運用していますが、これがDC資産と同じ利回りで回っていったとして同時に取り崩すとすると税引き後の運用益がやはり200万円余となり、ほぼ退職所得課税を相殺できることになりますが、逆に言うとただそれだけの効果しかもたらしていません。 あるいは、DC資産の運用益に対する税制優遇効果(運用益の20%課税が課されないことによるもの)が250万円内外ですから、こちらを相殺してしまうものと考えても結構です。
年金受給でいくとすると、よく言われる「60~65歳までの5年間で年金受給」というプランにしても、あるいは「公的年金と並行して受け取る」にしても、DCの受給期間中の公的年金収入が年額400万円以上に達してしまい、こちらも税負担が重くなりそうです。
このため、退職金や厚生年金・企業年金等が一定水準見込まれる人の場合は、税負担を最適化するためにいろいろと策を弄する必要が出てきます。
なお、DCを年金受給とする場合は更に社会保険料への影響にも目を向ける必要が出て来ます。 例えば、退職時期を調整する、DCを一時金と年金の併給にする、年金にするにしても更に支給年数の設定を工夫する、等々…。
「公的年金の受給開始までの穴埋め期間にDCを年金受給する」という、ポピュラーなプランについても、単純に60歳から65歳までの5年受給にするだけだとあまりお得ではありません。 DCの運用益を加味すると年金収入がかなりの額に上る可能性があるばかりか、65歳未満では公的年金控除も薄いため、税負担が意外に重くなってしまう可能性があります。 そこで、公的年金の方を70歳まで繰り下げ受給することにしてDCを10年間で年金受給することにすると、(1)期間が延びる分1年あたりの収入額も抑えられ、(2)65歳以上の手厚い公的年金控除も享受でき、(3)非課税運用できる期間が延びることからDCの受給総額の増加も期待でき、(4)繰り下げ受給により公的年金も最大42%増加するなど、色々メリットが出てきます。 DCの戦略を練る上でも、公的年金の制度知識(繰下げ受給)を持っていると採りうるオプションが増えるものです。
……しかし、果たして、これでいいんでしょうか?
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