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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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ワインファンド取り潰し。運用実態の見えないものに投資するのはやはり駄目です。
vin-netは、日本で数少ない(唯一でしたか?)ワインファンドを提供していた会社です。
投資家から集めた資金でワインをいくつか購入し、熟成させて転売差益を還元すると謳う匿名組合形式のファンドでして、「年々(消費されることによって)銘柄の希少価値が上がるので値上がりする」と主張していました。
ワイン投資の広告塔となっていた人物が、嘗てインデックス投資の啓蒙活動の代表選手とも言える立場にあった御仁だったこともあり、一部界隈からは揶揄交じりの人気を集めていました。

また、投資手法そのものや広告内容についても色々と突っ込まれていまして、インターネット各所に散らばっている状態なのですが、吊られた男さんのブログにてタグで一揃い纏まっていたのでそれをリンクさせて頂いておきます。
タグ:ワインファンド (吊られた男の投資ブログ)

さて、こうしたワイン投資界の雄たるvin-netですが。
とうとう、来るべきものが来ました。
株式会社ヴァンネットに対する行政処分について (関東財務局)

1.株式会社ヴァンネット(以下「当社」という。)に対して金融商品取引法(昭和23年法律第25号。以下「金商法」という。)第56条の2第1項に基づき報告を求めたこと等により、以下の事実が認められた。

〇不正又は著しく不当な行為を行っている状況
 当社は、欧州等において将来値上がりが期待されるワインを買付け、当該ワインの売却益の一部を配当することを内容とする権利(以下「ファンド」という。)の取得勧誘を行っている。
 当社から提出された報告書等によると、当社は、これまで複数のファンドの取得勧誘を行っているが、過去に償還を迎えたファンドにおいては、別のファンドの資金を流用することにより、実際の運用実績とは異なる高い運用利回りで償還金等を支払っていた。さらに当社は、こうした状況を認識しながら、新たなファンドの取得勧誘を行っていた。
   
 当社におけるこのような状況は、金商法第52条第1項第9号に掲げる「金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき」に該当するものと認められる。

2.このため、本日、当社に対し、下記(1)については金商法第52条第1項の規定に基づき、下記(2)については同法第51条の規定に基づき、以下の行政処分を行った。

                      記

(1)登録取消し
 関東財務局長(金商)第1577号の登録を取り消す。

(2)業務改善命令
(略)

監督官庁による登録取り消しという、いきなり死刑宣告です。

私自身、ワイン投資については、つい数日前のハイパーリンクチャレンジの記事でも触れたとおり、エイプリルフール記事でネタとして使わせてもらいました。
エイプリルフールにするくらいですから、つまりその程度の信頼性だった(そして、ネタとして受け入れられる程度にみんなの共有認識だった)ということなのですが、それにしてもこんなに早く潰れてしまうとは。

この界隈でもちょっとした祭りでして、既に記事を書かれている方もおいでです。
2015年12月保有投信成績 (独身一人暮らし女だからこれからどうやって生き抜いていくか考えるブログ)
ヴァンネットに行政処分 投資で大事な流動性や透明性を再認識 (ほったらかし投資のまにまに)




背信的行為


先述の、広告塔を担っていた御仁は、近著にて「運用資産が1000万円を超えたらその超えた部分は海外不動産とワイン」というポートフォリオを提示していたと言われています。
そのような発言を信頼して、本当に1000万円を超える部分をワインに投入されていた方、心中察するに余りあります。
財務局の発表によると、新しいファンドの流入資金を償還金に当てていたということで、典型的なポンジスキーム(自転車操業)でしかなかったようです。
ワインの銘柄選別、熟成による価値の向上、などといったものに期待し、投資界の大物の推薦にも背を押されて投資してみたら実際にはごく一部しか(もしくは全く?)ワインの購入などしていなかったわけで、立派な背信行為というべきでしょう。

そういえば不自然な引き込み方もあった


当ブログでも、1月23日の記事にて、利回りと称する数値の出し方がかなり不自然ということを指摘し、いったいどういう意図でそんなことをしていたのか訝しんでいたのですが、「資金の集まりが不十分でうまく運用できないから客を誘おうということか?」くらいにしか考えておらず、まさか一応投資家のアドバイザーとして定評も実績も本当にあった人が絡んでいながらポンジスキームだったとは。

また、件の人物の最近の著書の一冊(「10万円から始める~」というタイトルになっており、より投資初心者が手に取りやすいと想定される)では、資産残高1000万円でもそのうち100万円をワイン等に回すポートフォリオになっており、よりワインへのハードルを下げていたような気がします。

……これらのようにワインへの誘引を強めるような話に乗ってしまった人は、タイミング的にかなり痛い目にあうことになったと思いますが、どんな状況になっているんでしょうか。
いずれ投資していた人へのインタビューとかの報道も出てくる可能性もありますから、見てみたいと思います。

何をやっているのか、実像がありのままに見えますか?


この事案から得られる教訓、考えるべき事柄は多岐にわたると思います。
しかし本記事では1点に絞りたいと思います。
それは「やはり投資対象にするのは、投資実態が見えて理解できることが絶対条件だ」ということです。

そもそも、ワインに投資するというのは、基本的にコモディティの一種という位置づけで、価格変動が株式や債券と相関が乏しい(安定的である、インフレヘッジにもなる)というところに着目しているのだろうと思います。
しかし、コモディティということなら金もあれば原油もあります。それらではなくてあえてワインに投資するという、その選択に理由はあるのでしょうか?

金や原油なら先物でも投信(ETFあるいはミューチュアルファンド)でも取引が可能です。
先物なら取引所取引なので評価額は一目瞭然。金融当局が不正には目を光らせていますから変な価格になってしまうリスクも極めて小さいといっていいでしょう。
投信でも運用行動については監査人などが目を光らせていますし、結局は実質組入資産である先物や現物の取引価格をもとに評価額が算定されるわけですから、不正が行われるリスクも不公正な価額が付けられるリスクもほとんどありません。
いずれの取引も、自分の投じた資金はどんな風に動いているのか、コストはどうなっているか、リターンはどうなのか、実情を見るのに苦労することはありません。
そこにおいては、「業者に持ち逃げされる」「変な評価額が付けられる」というリスクはほぼ完全に回避されます。
(純金積立だと業者との相対取引になってくるのでやや話が変わってきますが、それにしたところで先物やETFの価額と業者の提示価額とを比較することで実質コストの水準を判断したりその業者が良心的か否かを判断したりするのはそんなに難しくないでしょう。持ち逃げリスクは業者の仕組み次第になってくるんでしょうが…)

それに比べてワインはどうでしょうか。
今回のvin-netに関する限り、ファンド募集要項のウェブアーカイブを見ますと一応運営経費として「鑑定報酬、弁護士・会計士に対する報酬」が書かれていましたから、持ち逃げや変な評価額といったリスクがヘッジされていないとは言い切れません。
とはいえ、監査報告書や(専門家費用の有無・金額が分かるような)損益計算書が見れる範囲にありませんでしたから、実際にそのような人々が活動していたのかは分からないというのが正直なところです。
また、実際に今回ポンジスキームが明らかになったところを見ますと、仮に弁護士・会計士がいたとしてもあまり監査人として不正・持ち逃げ防止の役には立っていなかったように思えます。
投信という形式だったら有価証券報告書に監査報告書が添付されてEDINETに提出・公開されることになりますから、監査人が必ず付き、しかも真面目に仕事をすることを期待してよく、結果的に持ち逃げのリスクはなくなりますが、そのような規制のない匿名組合では監査が存在しなかったり、存在してもなあなあで済まされたりする恐れもある。そういう仕組みだということはリスク要因として認識しておくべきでしょう。

また仮に、良心的な監査人がきちんと存在して持ち逃げリスクをヘッジしたとしても(今回はヘッジできていなかったようですが)、変な評価額というリスクのほうはどうでしょうか。
仮に鑑定人がいたとしても、その鑑定書が適正であるか否かということは、ワインに関して素人であるあなたは、あるいは監査人は、判別することができるでしょうか?
ワインというのは、まさにワイン投資を薦める人たち自身が言うとおり、銘柄や保存状態等の個別要因が大きく価格を左右するものです。
そのような要因の判断について、専門家たる鑑定人の言うことにノーといえる人はいないでしょう。となると、運営者と鑑定人が手を握って不当に高値あるいは安値をつけた鑑定書を出してきても、誰も止めることはできないということです。
また、運営者も鑑定人も誠実そのもので、良心に則った仕事をしたとしても、あくまでそれは見積価額(敢えて言えば机上の空論)に過ぎません。実際にその値段で売れるかどうかは、相対取引であれオークションであれ、実際に売却のためのアクションを起こしてみないと分かりません。そのときの諸情勢によっては、予想外に高値あるいは安値になってしまうことは十二分にあります。
このように、評価額の透明性という点については、取引所の先物市場と見比べれば値付けの妥当性が分かる金や原油などとは訳が違い、極めてリスクが高いと見るべきです。(また、個別要因の影響の大きさを鑑みると、個性というものがほとんどない金や原油と違って指標たり得る先物市場の形成ということも期待できにくいでしょう)

このように見てみると、ワインの運用というのは、あまりにもブラックボックスが多くて運用中の資産の実像がよく分からない点が多すぎるというべきです。
果たして、「分からない点が多い」ということを理解して、それでもなお魅力があると結論付けてから投資をしようとしていますか?
「希少性が上がっていくから価格も上がる」というイメージだけに踊らされていませんか?

ワインに限りません。
何が投資対象であるにしても、「誰がどこでどんな行動をしているか、どんなコストが発生して、現在どんな評価額か。評価額の根拠は何か」、それを理解できますか? 少なくとも、理解しようとすればトレースできるような制度的保障は整備されていますか?
そこを前提条件として備えたものでなければ、何であれ投資対象に入れるべきではないでしょう。
自分のお金です。その動き方が正確に見えないようでどうしますか?


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ワイン | トラックバック:0 | コメント:0
[ 2015/12/26(土) 04:29 ]
[ 最終更新:2018/02/11(日) 17:51 ]

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