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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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大和住銀が信託報酬引き下げを発表。これは一大事かもしれない
大和住銀投信投資顧問は、国内債券ファンドであるエス・ビー・日本債券ファンド(愛称:ベガ)につき、段階信託報酬の導入を発表しました。
今年の6月1日から適用されています。
「エス・ビー・日本債券ファンド」(愛称:ベガ) 信託報酬段階料率導入のお知らせ

今回導入された段階信託報酬は、従来固定料率だった信託報酬を、新発10年国債の利回りに応じた変動制にするものです。
前月末日の国債利回りに応じて当月1ヶ月間の信託報酬が決まります。
国債利回り(従来)0.5%未満1.0%未満1.5%未満1.5%以上
委託会社0.395%0.170%
(▲0.225%)
0.245%
(▲0.150%)
0.320%
(▲0.075%)
0.395%
販売会社0.380%0.155%
(▲0.225%)
0.230%
(▲0.150%)
0.305%
(▲0.075%)
0.380%
信託銀行0.045%0.045%0.045%0.045%0.045%
合計0.820%0.370%
(▲0.450%)
0.520%
(▲0.300%)
0.670%
(▲0.150%)
0.82%
8%税込計0.8856%0.3996%0.5616%0.7236%0.8856%

国内の債券市場がマイナス金利を含む異次元緩和政策により極めて低金利に定着している状況の現在、段階信託報酬とは言いながら最低ランクの「国債利回り0.5%未満」からさえそう簡単に抜け出すとは考え難いところです。
従って、実質的には0.3996%への引き下げという風に捉えてしまっても当面問題はないと思います。
低金利の中で信託報酬が高止まりしていると金利収入では逆ザヤになってしまい、キャピタルゲイン頼りの不安な運用になってしまいますから、これは素直に朗報と捉えてよいでしょう。

なお、本ファンドは参考指数を上回ることを目的とするアクティブファンドとなっています。
ファンドの詳細説明は下記サイトをご参照下さい。
エス・ビー・日本債券ファンド (愛称:ベガ)の評価・解説 (ノーロード投資信託徹底ガイド)

2008年の下落は、信用度が急落したパシフィックホールディングス債の、全額損切りによるものです。2009年もリーマンショックでデフォルト懸念から大幅に価値の下がった社債の損切りによる損失で、基準価額は2009年のリーマンショック時に1年に17%も下落しています。

全体の36%を社債に投資しているため、コツコツと利息収入を得てもドカンと下落するリスクを抱えています。

社債に投資するファンドは、平時はベンチマークや参考指数である国債指数にリターンが勝つことが多いのですが、金融危機があると信用不安により、それまでの優位がひっくり返ってしまうほどリターンが悪くなることが多いです。

と指摘があるとおり、個別銘柄のリスクを結構取っているようです。

社債投資に関しては丁度下記記事でも指摘されたところでもあり、よくよく注意の上臨む必要はあります。
SBI-PIMCOジャパン・ベターインカム・ファンドが登場―低コストは評価できるが社債投資への理解が必要  (The Arts and Investment Studies)

とはいえ、信託報酬0.3996%といえば、かのSMT国内債券インデックス・オープンと同じ数値です。
ここまで下がってきたとなると、コスト面での不利はかなり解消されています。
債券運用の資金の一部の向け先として、俄然存在価値が出てくるかもしれません。

……と、ここまで前振り。実はこのあとようやく本題です。



この一歩は、このファンドにとっては小さい


実のところ、今回の信託報酬引き下げによっても、当ファンドを購入することを自信を持って勧められるようになったかというと、そこまでのインパクトのある話ではありません。

確かに、SMTと肩を並べたというのはよく頑張ったという印象はあります。
しかし、SMT自体今や最安コストというわけでもありません。
たわらノーロード国内債券(信託報酬0.162%)や<購入・換金手数料なし>ニッセイ国内債券インデックスファンド(信託報酬0.162%)、アクティブではニッセイ日本インカムオープン(愛称:Jボンド)(信託報酬0.1566%)、ヘッジ外債ですがひとくふう世界国債ファンド(為替ヘッジあり)(信託報酬0.270%)など、より低コストな選択肢も今や数多くなっています。
SMT並みの低コストと言っても、某少年漫画で例えれば「セル編やブウ編になって私の戦闘力は530000ですと言い出すようなもの」であって、何を今更…という程度でしかないとも言えます。

先述の信用リスクの問題も考えますと、この値下げをもってしても、このファンド自体は、悪くはなくなったもののなお微妙なものと言わざるを得ません。

しかし投資信託にとっては偉大な一歩である


今回の信託報酬引き下げの真の意義は、それでもなお、極めて重大です。
わが国の投資信託の運営・販売のあり方そのものに対してドラスティックな転換を迫る画期となった出来事であった、後にそのように評されるかもしれないとさえ考えます。

既存のファンドをそのまま引き下げた


今までの「コスト革命」とされる出来事は、そのほとんどが、そのために新たなファンドを立ち上げるという形で起こってきました。

古くはSMTインデックスシリーズ(旧STAM)の立ち上げにはじまり、emaxisシリーズ、インデックスeシリーズ(旧CMAM)、Funds-iシリーズ、<購入・換金手数料なし>シリーズ、三井住友DCシリーズ、たわらノーロードシリーズ、いずれも新ファンドの立ち上げです(確定拠出年金専用ファンドの一般開放も含まれていますが、実質的に同視していいでしょう)。
各運用会社とも、従来のインデックスファンドはそのまま並行運用しているのです。

低コストアクティブファンドでも事情は同じです。
ひとくふうシリーズもたわらplusシリーズも新設ファンド。
iTrustなど、全く同じ運用をするファンドがありながらわざわざ新たなベビーファンドとしてぶら下げています。

今回のベガはそれらとは違います。既存のファンドを、直接値下げしているのです。
ありそうでなかった事例です。

販売会社をも減収に巻き込んだ


「ありそうでなかった」といっても、既存のファンドの信託報酬を直接下げた事例だってなかったわけではありません。
しかし、先例を見ると、どうも今回はそれらとも様子が違います。

セゾン投信のファンドやexe-iシリーズが信託報酬が下がったと言われる事例がありますが、あれは組入れ先のETFのコストが下がったことに連動しただけです。
特に誰かが泣いたわけではありません。

後発のシリーズに対抗して<購入・換金手数料なし>シリーズが信託報酬を下げた事例もあり、このときは販売会社の手数料も下がりました。
しかし、このシリーズの販売会社はネット証券であったり、銀行であってもネットバンキング専用の取り扱いであったりというところです。
もともと販売活動にコストがほとんど掛かりませんから、販売会社の手数料収入が下がっても抵抗は小さいでしょう。(SBI証券で対面取引ができたり、フィデリティ証券で電話取引ができたりしますが、比率的にまず誤差の範囲でしょうし会社自体コスト引き下げに理解はありそうです)
参考:信託報酬率引下げ(投資約款変更)について

SBIセレブライフストーリーシリーズが信託報酬を下げたことがありましたが、その当時は当該ファンドの販売会社はSBI証券だけです。
運用会社のSBIアセットマネジメントと同じグループですから、信託報酬の引き下げの話もスムーズに進めることができたものと推察できます。
参考:SBIアセットのターゲットイヤー型ファンド、信託報酬値下げ (梅屋敷商店街のランダムウォーカー)

SMTシリーズが信託報酬を下げたことも2回ありますが、少なくとも2010年の1回目は委託会社の取り分の下げ幅のほうが圧倒的に大きくなっていました。(2012年の2回目の引き下げ内訳の資料がどこかにないか探しましたが見つかりません。誰かまとめてませんか?)
更に、SMTシリーズは目論見書では販売手数料の徴収も可能な形になっていますから、販売会社としてはいざとなれば販売手数料を取ることで減収分を補填することだってできます。
このため、販売会社としても飲みやすい条件だったろうと思います。
参考:STAMの信託報酬引き下げの内訳が判明 (吊られた男の投資ブログ) *1回目の引き下げ
参考:住信アセットマネジメント株式会社と中央三井アセットマネジメント株式会社の合併に伴うファンド名称等の変更について *2回目の引き下げの一部

今回のベガはそのどれとも異なります。
ベガは、SMBCフレンド証券や鹿児島銀行など、一般(グループ外)の販売会社で対面販売もしていますから、販売会社にとってもコストが掛かります
そして、それにもかかわらず、冒頭の表に示したとおり、販売会社にも委託会社と同等の引き下げ負担が求められています
さらに、このファンドは目論見書で販売手数料なしと表記しており、ここで補填することもできません

つまり、販売会社にとっては手痛い減収となるわけであり、なんとしても抵抗したかったはずの案件です。
そこを大和住銀は枉げて承知させたということです。


ここに、今回の信託報酬引き下げの真の意義があります。

コスト引き下げの下限を一気に下げるための貴重な先例に


日本の投資信託は、アメリカとは逆に、信託報酬が時を追うごとに上昇傾向にあることが知られています。
参考:知っていますか?日本の投資信託は非常にコストが高い事を! (ノーロード投資信託徹底ガイド)

その高止まりの原因として、販売活動を熱心にしてもらうために、販売会社の取り分を厚く確保してやるという慣行があったことも、つとに指摘されているところです。

今、ベガによってそこに風穴が開いてしまいました。
どういう交渉経緯があったかは窺い知れませんが、結果としては、販売会社取り分の引き下げを受け入れ、販売手数料も取れず、当ファンドからの収益の純減に甘んじたのです。

先例ができてしまった以上、委託会社が販売会社に再び信託報酬の引き下げを持ちかけ了解させることは今までより俄然楽になるものと思えます。
もう拒否する理由がありません。

こうなると、信託報酬改定でコストを引き下げる余地が一挙に広がります。
あるいは、募集開始の最初から販売会社分を今までよりも思い切り低く設定してしまうことだってできるかもしれません。
販売会社の取り分という、コストの底が一気に抜けるのです。

インデックスであろうが、アクティブであろうが、信託報酬の低下は確実に運用成果を向上させます。
それを一気に加速させかねない実例を作ってしまった大和住銀。
今回の出来事は、まことに偉大な功績と言わなければならないでしょう。

閑話休題。
エス・ビー・先進国債券ファンド(愛称:アルタイル)」とか、「エス・ビー・新興国債券ファンド(愛称:デネブ)」とかって作られないのかな…
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信託報酬と販売会社・委託会社の構造改革論 | トラックバック:0 | コメント:0
[ 2016/06/08(水) 00:14 ]
[ 最終更新:2016/06/10(金) 00:56 ]

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