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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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文庫でこれは反則レベル。「はじめての確定拠出年金」
はじめての確定拠出年金を読みました。
正確には、10月頃の刊行間もない頃に読んでいたのですが、例によって記事にするのが遅れていました(^^;

本書の筆者である田村正之氏は、日経新聞の記者として投資・金融関連の記事の極めて質の高いものを執筆されることで有名な方です。
本書では、その筆力と知見をふんだんに生かし、文庫本でありながら極めて密度の高い情報が盛り込まれています。

まず第1章では、公的年金制度の全体像及び公的年金の制度改正についての解説がなされています。
公的年金制度については、年金の支給見込み額についての説明もさることながら、より注目すべきことに、「DCと公的年金を組み合わせることでより有利な終身年金が作れる」というスキームが紹介されています。
すなわち、DCを先に受給することで公的年金の受給を遅らせることができ(繰下支給制度の利用)、これによって公的年金の額が増加する上にそれが終身かつインフレ連動の形で継続する(公的年金の終身支給、物価スライド制度の活用)ということです。
繰下支給による年金増額はあまり知られていないところでしょうし、終身やインフレ連動というのも通常は意識されることが少ないでしょうから、そういう細かいが重要な知見を活用した提案は貴重なものと感じられます。

第2章では、優遇税制に関する話。
運用益非課税の点に関連して、「受給開始を遅らせることで有利な条件の口座内での運用を70歳まで継続する」というスキーム、掛金所得控除の点に関連して「減税効果は国税は年末調整の一部分、地方税は特別徴収の減額という形で現れるので、意識せず消費してしまいやすい」「したがって、意図的に別口座に相当額を貯めておく等の仕組み作りが重要」という指摘がなされています。

第3章は口座を開設する金融機関選び、第4章は資産運用の鉄則(長期分散投資、リバランス等)。
いずれもインデックス投資家には親しみのある内容です。

第5章以降は特に白眉になっています。
第5章は受け取り方に関する問題で、「退職所得控除は他の退職一時金と、公的年金控除は他の年金制度と同じ枠内で処理されることになるので、意外に大きな税負担が生じる場合がある」という落とし穴について注意喚起がなされています。
他方で、「そのような仕組みだから実は全く有利ではない」という説に関しては、「現役時の所得が高ければ退職後の所得j課税になることで税率が下がるはず」「現役時の所得が低ければ控除の枠に余裕があるはず」という推論を前提に、やはり幾許かは有利であるはずだと結論付けています。
控除があるから有利だ有利だという説が否定されることにより、不利だ不利だと逆方向に突っ走りたくなるのが人情ですが、どちらの極端にも与せずに「どの程度の有利さなのか」を冷静に示している、貴重な解説です。

第6章は企業型DCという、他のDC本であまり正面から触れられていなかった分野です。
現状で企業型加入者の平均利回り実績が著しく低いこと、その背景が元本確保型商品への集中にあり企業によってはこの対策としてバランスファンドをデフォルトに設定する事例があること、更に選択制DCにまで話が及びます。
選択制DCについては、「従業員にとっては給与収入に該当しないことから税や社会保険料を抑えられる一方、将来の厚生年金も下がる場合がある」「企業にとっては経費を増やすことなく年金制度が作れる一方、厚生年金が減ったことにより責任を追及される恐れがある」という、双方のメリット・デメリットを解説しています。ここまで分析した説明は一般向けにはあまり目にしません。

第7章は将来の更なる制度改良への提言です。
特に、海外制度の紹介・比較が分かりやすく、何がどう変わればより有利になるかイメージしやすくなっています。


全体を通して、良い意味で「やはり新聞記者の本だ」という印象です。
それは、一つには現場取材による情報が充実しているということで、個人型DCに加入しようとする人の相談事例、企業型DCを運営している企業や従業員に個人向けDCを紹介している企業の取り組みなど、実際に動いている人の声が聞こえることでイメージがつきやすくなっています。
また、個人型DCで労働金庫が新プラン導入を計画していることなど、まだ一般に詳しい情報が出ていないはずの話(最近、モーニングスターに関連記事は出ています)もあり、このあたりはさすが日経新聞の取材力だと思わされます。

また、本文の各所に、さらなる制度改正をすべき問題点や、加入者・導入企業など当事者が心がけたり改めたりするべき点などの提言が散りばめられており、筆者の問題意識の強さもうかがい知れます。


文庫本一冊でこれだけの内容が詰め込まれれば、さぞ難解になりそうですが、まったくそのようなこともなく平易そのものです。
情報量、読みやすさ、将来に向けての問題意識、どれをとっても不十分な点が見当たらず、DCの入門に1冊だけ読むとしたらあるいはこの本でよいかもしれません。


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[ 2016/12/13(火) 03:35 ]
[ 最終更新:2016/12/13(火) 03:35 ]

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