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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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優先株の使い方を考える
前々回の記事にて、優先株の商品性について(優先株の設計について一定の前提を置いたもとで)考察してみたところです。

では、これを踏まえて優先株ETF(PFFなど)の使い方はどのようになるのでしょうか。
私自身は特に利用していませんし目下のところ使う予定もしていませんが、仮に利用するとしたらどういう考え方が適切なのか考えてみます。


商品性のおさらい


まず、優先株の商品性を再確認します。
これは、要するに、「(優先も普通もない世界での)単純な株式を持ちつつ、会社財産に対するコールオプションを普通株式の株主に売っている」という合成ポジションだと認識したところです。
オプション料として優先配当を受け取っています。

コールオプション売りというポジションだという認識によれば、業績拡大・企業利益流入による会社資産充実の恩恵は受けません。(配当は増えないし、残余財産分配の額も増えない)
それを放棄する見返りとしてオプション料(優先配当)があるからです。

従って、優先株というのは株価がなかなか急激には上がっていきにくい。受け取れる配当や残余財産分配請求権が「優先」の枠内に限定され、それ以上の企業価値の増分を享受できないのですから、上がる理由がありません。
そして、PFFのようなETFの場合、ETFが企業から受け取った配当金は基本的に受益者に払い出されてしまい、ETF内部で再投資されるということはあまりないはずなので、ETFそのものの価格も上がっていきにくいことになりそうです。





運用に当たっての考え方


インカムゲインの獲得源と割り切る方針


一つの回答としては、「約束されたオプション料(優先配当)」の獲得源」として割り切ってしまい、債券と類似の使い方を決め込むことです。
この場合、
・極端に大きな業績拡大の場合、普通株の方が配当が大きくなる可能性があるから機会損失が生じる恐れがある(オプション売りの結果として放棄させられた会社財産拡大分が普通株に回ったことによる効果)
・業績縮小期には、オプション料による優先配当収入は維持されても、会社財産が痛むことなどを反映して株価そのものは下がっていき、結果としてトータルリターンとしては冴えなかったり損失が出たりする可能性がある(コールオプション売りにはキャピタルロスを防ぐ効果はない)

などといった問題点を認識しておく必要はあります。
これらにつき十分認識・検証し納得しているのなら、これはこれで一つの見識というに妨げはないでしょう。

「安定収入になっていれば、別に普通株より一時的に不利な配当になる可能性があっても構わない」「トータルリターンが冴えなくても、インカム確保が重要」といった投資方針を自分が取っているのかどうかです。
その通りであれば、特に問題のある投資態度ではありません。

自分自身の財務状況や今後のマネープランの棚卸し(キャピタルゲインで大きく増やすなどといった必要がないのか、等)をしておくことが大切でしょう。

尚、キャピタルロスの可能性に目を瞑ってもインカムゲインを重視するというのは、公募投信における多階建て毎月分配型を連想すると、方針自体が失当なようにも一見見えなくもありません。
しかしながら、PFFのようなETFにおいては、分配金の財源は、あくまでも組入企業が支払った配当金の範囲内に限られるのが原則です。
多階建て投信のように、オプションを駆使してみたりFoF形態を利用してみたりでインカムゲインなのかキャピタルゲインなのか蛸足なのかもよく分からないようにして、事実上無制限に分配金を出してしまうというのよりは、よほど健全性は高いでしょう。
分配金に枠が決められている分、「実態は元本が戻っているだけで、資産が毀損しているという事態の恐れはかなり小さくなっています。
その意味では、インカムにのみ着目しているといえどもそれなりに賢明な運用方針ということは可能でしょう。(勿論、特性そのものを理解していればです)

有利なトータルリターン狙いでの運用を図る方針


勿論、キャピタルゲインを含めたトータルリターンにおいて普通株式よりも有利な運用成果を求める方針も、取れないわけではありません。
ただし、かなり癖のある資産ですから、相場状況により機動的に利用するかしないかを考えないと、普通株式より不利になってしまう場合もありえます。

定性的にいうと、普通株式との対比で最も有利なのは、オプション売りが組み込まれているという性質上、「企業利益の規模が優先配当枠に比して大きすぎず、利益の伸びもそこそこ順調だが極端に急とは見込まれていない」という、端的に言えば「横横」といえる場合でしょうか。
要するに、企業利益が優先配当に吸収され、普通株式の株主が十分享受できない(普通株式に対する「配当+PBR増分」の合計値が優先配当に満たない)状況が続く場合であれば、優先株式の方が有利になる可能性が高くなります。
資産価値自体としても優先株式が優位に立つほか、高配当を選好して「普通株式売り、優先株式買い」のフローが発生することによる需給効果も見込めるでしょう。

また、「企業業績そのものは多少不振が見込まれているのだが、優先配当は十分払い続けられるだけの財源がある」という場合は、普通株式との相対的な比較においてはある意味で最も有利でしょうか。
この場合、普通株式は基本的に下落せざるを得ません(配当財源の減少やPBRの減少により資産価値が下がる)が、優先株式の場合はオプション料(優先配当)分だけ収入が確保されているので確実に有利であると言えます。これこそオプション売りポジションの威力です。
もとより、この場合も配当狙いで「普通株売り優先株買い」のフローは生じるでしょうから、需給による下支えもあります。
ただし、このケースの場合、当期利益の規模が優先配当に比して小さくなってくると、配当後のPBRそのものが下落基調になっていくことから、その観点からはキャピタルロスに傾いていく可能性があります。インカムゲインや需給要因による下支えなどとトータルで計算すると、絶対的には果たして利益になっているのか損失になってしまっているのか、十分注意して分析していくべき局面でもあるでしょう。

企業利益が極端に大きく伸びていくと予測される局面では、普通株式が(配当およびPBR増により)享受できる財源が優先配当より大きくなる可能性があります。オプション売りによってオプション料以上の収益を放棄した(全部オプションの買い手=普通株式に持っていかれる)のが裏目に出る格好です。
こういうケースになってくると、優先株式は普通株式より不利です。
需給フローも「優先株売り普通株買い」に傾きますから、優先株には逆風が吹くでしょう。
「ほどほどの好調」なら優先株で大丈夫な可能性もありますが、「極端な好調」だと駄目になってくるという、難しい見極めが必要になります。

もとより、優先配当といえども配当ですから、会計上許される財源がなければ払うことができません。
従って、「企業業績の極端な不振」が見込まれる場合には、優先配当さえも支払えなくなる場合があり、そのような場合には優先株式といえども会社財産の減少のあおりをそのまま受け、普通株式と同様に資産価値下落を免れません。
いや、「ほどほどの不振」の場合には優先配当を見込んで需給要因で下支えされていたのが「極端な不振」によって消滅する分、短期的には普通株以上に急落するかもしれません。
いずれにせよ、ここにおいても、「ほどほどの不振」のステージなのか「極端な不振」のステージなのかの見極めが重要になってくるでしょう。


以上のように、トータルリターンの優位性を求めて優先株を利用しようとすると、込み入った商品特性とも相まって、かなり微妙な判断ができるだけの相場観が必要になりそうです。
もとより、それだけの自身と実力のある人にとっては、局面によっては非常に美味しい投資対象になりうる可能性もあるかもしれません(ただ、相場観に基づいて普通株と優先株を機動的に使い分けて…ということになってくると、売買コストの増大も気にはなってくるところです)

もちろん、一番駄目なのは、インカムを狙うのかトータルリターンを狙うのかが曖昧不明確な状態でなんとなく投資することでしょう。
長期に持ち続けるのか相場観に則って「買ってよい局面なのか、手放すほうがよいのか」判断しなければならないのか、取り組み姿勢が全く違うわけですから、ここが曖昧模糊としては出鱈目な行動しか取れないに決まっています(ただし、偶然好結果になる可能性は否定しませんが)。

まず自分の基本的な投資方針を(財務状況や資金使途計画などを含め)確認し、投資態度を確立してから投資行動に臨む。この当たり前のプロセスが、商品特性の複雑さにより特に重要性を増す。そんな資産だと思います。


*いうまでもありませんが、投資判断は自己責任でお願いいたします。本稿を参考に取られた投資行動につき、いかなる責任も負うことはできかねます。
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外国株・ETF | トラックバック:0 | コメント:0
[ 2016/12/21(水) 00:27 ]
[ 最終更新:2016/12/21(水) 00:27 ]

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