年の瀬も押し詰まって、12月22日付けのEDINETに新ファンドの設定を内容とする有価証券届出書が提出されていました。 野村投信のFunds-iシリーズへの新ファンドの追加。配当貴族ファンドと、戦略的配分(TAA)型バランスファンドです。
既に公式サイトにもリリースが出ています。 2017年1月10日、「Funds-iフォーカスシリーズ」として「米国株式配当貴族」「米国株式配当貴族・為替ヘッジ型」を新規に設定 2017年1月10日、お客様の投資スタイルに合わせて5つのファンドから選択が可能な「インデックス・ブレンド」(愛称:My Funds-i)を新規に設定
米国株式配当貴族ファンド ファンド名:野村インデックスファンド・米国株式配当貴族/野村インデックスファンド・米国株式配当貴族・為替ヘッジ型 連動対象:S&P 500配当貴族指数(配当込み・円換算ベース)/S&P 500配当貴族指数(配当込み・円ヘッジ) 決算日:いずれも4月22日(初回平成29年4月24日) 信託報酬:いずれも0.54% 販売会社:SBI証券、楽天証券、新生銀行 (なお、EDINETには野村信託銀行の名前もありますが、同行が投信販売をしているとはついぞ聞いたことがなく、当初自己設定など特殊な案件限定ということでしょうか…)
戦略的配分(TAA)型(インデックス・ブレンド) ファンド名:インデックス・ブレンド(タイプⅠ/タイプⅡ/タイプⅢ/タイプⅣ/タイプⅤ) 投資対象:以下の14インデックスに連動するマザーファンドに投資する。
TOPIX *日本株式 MSCIコクサイ(円ベース・為替ヘッジなし) *先進国株式 MSCIコクサイ(円ベース・為替ヘッジあり) *先進国株式為替ヘッジ MSCIエマージング(配当込み・円ベース) *新興国株式 S&P 500配当貴族指数(配当込み・円換算ベース) *米国配当貴族株式 NOMURA-BPI総合 *日本債券 シティ世界国債インデックス(除く日本、円ベース、為替ヘッジなし) *先進国債券 シティ世界国債インデックス(除く日本、円ベース、為替ヘッジあり) *先進国債券為替ヘッジ JPモルガン・ガバメント・ボンド・インデックス・エマージング・マーケッツ・ディバーシファイド(円換算ベース) *現地通貨建て新興国債券 JPモルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(円換算ベース) *米ドル建て新興国債券 ブルームバーグ・バークレイズ米国ハイイールド社債高流動性インデックス(ヘッジなし・円換算ベース) *米国ハイイールド債券 東証REIT指数(配当込み) *日本リート S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み、円換算ベース) *先進国リート S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み、円ヘッジ) *先進国リート為替ヘッジ
なお、配分比率は、リスク性資産(上記で青字以外のもの)への比率が、タイプⅠから順に30%/43%/55%/65%/80%になるように定める。株式会社ウエルス・スクエアの定量分析などを踏まえた助言により適宜見直す。 *「S&P500配当貴族指数(配当込み・円ヘッジ)」は投資対象に入っていません 決算日:4月22日(初回平成29年4月24日) 信託報酬:0.5184%/0.5292%/0.54%/0.5508%/0.5616% 販売会社:SBI証券、楽天証券(こちらにも野村信託証券の名前がありますが…)
所感 米国配当貴族は、8月30日にSMT米国株配当貴族インデックス・オープンが登場して以来2例目の登場となります。 SMTでは信託報酬が0.594%となっていますから、今回のFunds-iのシリーズはそれを凌駕しています。 待ち望まれていた配当貴族インデックスファンドに、SMTがまず先駆者として順調に資金を集めていましたが(12月末時点で6億円ほどに達しています)、競争者の登場でコスト競争も始まっていくのかもしれません。
一方の米国配当貴族為替ヘッジ付きというのは初の登場です。 信託報酬は一緒なので、為替ヘッジを好む場合には当ファンドの一択ということになりますが、為替ヘッジコストがどのくらいかかるかは未知数ですので注意が必要でしょう。 ともあれ、選択肢が増えたこと自体は評価してもいいでしょう。
TAA型は、リスク性資産と非リスク性資産との比率を分けた後、それぞれの中で各インデックスを定量分析する(何をどうするのかよくわかりませんが…)事によって具体的な比率を決定するプロセスになっています。 emaxisの最適化バランスとは異なり、リスク水準そのものを決定しているわけではない(「リスク性資産」が所定値に収まっていれば、リスク数値そのものが幾つになるかは分からないし問題としない)と理解しています。 要するに、ラップ運用と理解してよいと思いますが、信託報酬そのものはごく普通のインデックスファンドと同程度(もとよりニッセイ・三井住友DC・たわら・iFreeなどの超低コストインデックスシリーズには敵わず、その一歩後ろの水準になりますが…)に仕上がっています。 ウエルス・スクエアなる会社の分析・助言費用は、おそらく信託報酬の委託者報酬中から出る(「ファンドの運用とそれに伴う調査」に該当)と思いますから、実質コストを押し上げる要因になることはないとすると、ラップ運用サービスにとってかなりの脅威になる可能性もあります。
投資対象資産も、配当貴族インデックスやハイイールド債が入るなど、なかなかユニークではあり、他には無い運用の選択肢になるかと思います。 また配当貴族が入ることで、新規設定された米国株式配当貴族ファンドと共通のマザーファンドに資金が入ることになりますから、よりマザーファンドの運用が安定化するかもしれません。 (米ドル建て新興国債券って本当に非リスク性でいいのか? など疑問もありますが…)
リスク水準を予め数値として決めておいて、言い換えれば最大損失の目安を付けておいた上での運用を目指すのであれば、emaxisの最適化バランス。 「非リスク性資産」(「無リスク資産」と異なるのが悩ましいところですが)の枠を確保しておいて、その中で最良の結果を目指す(ウェルススクエアの提示する「最良」が最大リターンのことなのか最良シャープレシオのことなのか別の何かのことなのかよく分かりませんが…)という方向での運用(一時的なロスの幅は直接には気にしない。「非リスク性資産」に期待、もしくは外部の無リスク資産などで調整する)であれば、Funds-iインデックスブレンド。 そういう使い分けをすることになるのでしょうか。
今年はスマートベータの年であり、ひとくふうシリーズ(最小分散)・たわらplusシリーズ(高配当最小分散)・SMT配当貴族など新たな類型のファンドが続出した年でした。 また、今年はラップの年でもあり、THEO、ウェルスナビ、楽ラップなど、ロボアドバイザーを利用し低コストを売りにした運用サービスが雨後の筍のように出てきた年でもありました。 その年の最後に現れたのは、大御所・野村ホールディングスの放った刺客でした。 配当貴族インデックスでコスト競争を仕掛け、ラップ運用を望む向きにはインデックスファンド並のコスト(ラップ手数料が要らない!)のTAAファンドを差し向ける。
なかなか年の締め括りに相応しい役者により、相応しいものが出てきた感があります。
ヽ(´ー`)ノ個人的にはTAAは買わないけどね ヽ(´ー`)ノ 米国配当貴族は乗り換えてもいいかな
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