去る1月14日に、Fund of the Year2016の表彰式が行なわれ、私も参加してきました。
当日の模様については、すぱいくさんがそれはもう詳細にまとめてくれています。 【速報】投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016 結果発表【第一部 投資信託 これまでの10年、これからの10年】 #foy2016 【速報】投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016 結果発表【第二部 結果発表】 #foy2016
そのほかにも多数のブログ記事もあり、今更感がありますが、全投票結果が公式サイトに出たところでもあり、下位まで含めた簡単なレビューもするという意味で、遅ればせながら記事にします。
金融庁よりサプライズ 今回は、懇親会に金融庁の人が参加するという事前情報もあり、その意味するところについて色々と期待が持たれていましたが、表彰式が始まった途端にそれがある意味最高の形で満たされることになり、満員の会場内は異様な興奮に包まれることとなりました。 森信親金融庁長官からのメッセージが届いていたというのです。 金融庁長官からのメッセージ
内容は、上記リンクに全文があるとおりですが、・「投資の成功体験が共有されていない。手数料獲得のための売りやすい商品を売ることが横行していた」との問題意識 ・積立で良質な投資商品により安定的な資産形成をすることが重要 ・そのために、積立NISA創設により後押しするとともに、金融機関の取り組みの改善を迫る ・投資家自身が商品を評価・発信するのは質の向上に有意義であり、更に深化していってほしい
といったものです。 日頃から一貫して森氏が雑誌記事などで自ら述べている、あるいは「こういう考えだ」と解説されているところとほぼ同様であり、内容自体は特段目新しいものというわけではありませんが、投資家の主催イベントにおいて直接メッセージが出されたというのは小さくない意義がありそうです。まさに、当局の目指す政策はこのイベントと一緒だとお墨付きを付けるに等しいためです。
金融庁が積立支援のための制度を作り、金融機関の取り組みを指導する。これ自体ももちろん重要です。 しかし、いかにそのような取り組みを実行したところで、買い手である投資家側が適正な商品を選ぶという意識と能力を持たないことには意味がありません。金融機関には不勉強な顧客に高収益(売り手にとって)の商品を売り込む動機が常にありますし、顧客側があまり良質でない商品を選んでしまうのを止めることもできません。 その意味で、ボールは投資家の方にある、投資家が自ら識見を高める責任を負わされていると言っても過言ではないでしょう。このイベントが高く評価された原因もそこにあります。 金融機関側はフィデューシャリーデューティーを宣言。でもいい加減投資家側も学習を進めるターンだよね
何度も繰り返しての指摘になりますが、現在はNISA創設やDC拡充、一方で社会保険の切り下げなど、自助による資産形成を重視する方向性です。 そのためにも、より一層投資の知識・識見を一人一人が持つ必要性が高まっているところであり、その意味で本イベントは俄かに社会的意義が極めて高いものになったと言うべきでしょう。
なお、表彰式が終わった後の懇親会では、金融庁の課長補佐が積立NISA制度についてミニ講演をしてくれました。これについても合わせて当時の速報ツイートをまとめておきます。
正直言って、債券系のETFを適用除外にする方向というのは意外でした。別に、長期積立・資産形成の目的に反するものとまでは思えないんですが……
過去10年の振り返り 金融庁のメッセージの後は、過去10年の振り返りのトークショーがありました。 イベント会場から速報ツイートをしていましたので、それをまとめます。
2007年というのはまだ私も投資を始めていないタイミングですが、そのころはPRUマーケットパフォーマーとかさわかみ投信とか、今は昔のファンドが長期投資の主力を張っていたということで、隔世の感があります。 しかし、その頃からすでにセゾン投信はあったというのですから、これはこれで凄い話…
投票結果 投票結果については、公式サイトに載っている通り、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドが3連覇を果たしました。 2位のたわらノーロード先進国株式とワンツーフィニッシュというのは大方の予想と大きく外れてはいませんでしたが、票差が146対55と、意外に大きく付いています。 かつてSTAMが信託報酬を引き下げた途端にグランプリを受賞したところから始まる、信託報酬引き下げ→優勝、というパターンは崩れませんでした。 ……しかし、コストでは同水準のiFree先進国株式がここに食い込んでこないのはちょっと気の毒な感がなくはありません。
3位に入賞したのはバンガードのVTですが、同社の金野真弓氏によりますと という経緯があったそうです。 今現在はバンガードのETFが(地域別から規模別からセクター別から高配当から各種債券から)膨大な数に上ることを思えば、バンガードに注目させる切っ掛けを作った意味でも本賞の意義は極めて大きかったことがわかります。
全体的な傾向としては、「最低コストのインデックスファンド」と「特定の直販アクティブファンド」とが優勢を占める傾向は今年も変わらなかったようです。 もう少し低コストスマートベータ系の新顔が名を連ねてくるかと思いましたが、SMT米国配当貴族インデックス・オープンが16位に入った程度で、意外に奮いませんでした。ただし、「たくさんある資産のうち新興国株式だけがスマートベータ」というiFree8資産バランスは4位に入っています。 正直、ごく一部だけがスマートベータという奇妙なバランスファンドがここまで来るとは(敬遠されそうな商品性だけに)意外でした。いっそ全資産がスマートベータなら十分上位予想できたんですが… また、低コストアクティブファンドとして登場し、特設サイトの設置などユニークな試みをしたiTrustシリーズが1票も獲得できていないのも驚きです。(絶対これに投票しただろう、と思っていた人もいただけに…) やはり、スマートベータやアクティブファンドとなると運用開始してから日が浅いでは信頼性が足りず、低コストインデックスファンドを押しのけてまで投票するのに二の足を踏むのでしょうか…
その一方で、DCニッセイ外国株式インデックス、ひふみ年金という2本のDC専用ファンドが20位タイにつけているのも注目しています。(更に、19位の三井住友DC日本株式インデックスファンドSも、9月にDC専用から一般開放されたばかりでした) DC専用ファンドがこういった賞で上位に進出してくるようになると、DC制度そのものに対する注目度も多少上がってくるのではないかと期待したいところです。
ちなみに私が投票したファンドは…… 2本投票したファンドの両方とも、4票を獲得していました。
……って。 ひとくふう日本株式、私しか投票してない。 インデックス並のコストだし私を初メディア取材に導く切っ掛けだった功績もあるし、もっと高く評価されてもいいだろうに(´・ω・`)
ちなみに、表彰の終わった後、第1回から今回(第10回)まで10回のトータル得票でランキングを作ると、トップが<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド、2位がVT、3位にセゾン・バンガードグローバルバランスファンドとなるそうです。 <購入・換金手数料なし>シリーズはまだ3回しか投票対象になっていないのですから、それだけで2008年からあったVTやそれ以前からあったセゾンを上回ってしまうというのは如何に圧倒的な人気があったかという証拠でしょう。 反面、投票するブロガー自体も最近になって急増していたわけですから、(たらればの話にしかなりませんが)仮に現在の投票者が過去10年投票をし続けていたとしたらどうなっていたかというのも気になるところではあります。過去の年度においてVTやセゾンがもっと票を増やして、累計での覇権を譲っていなかったかも分かりません。
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