海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
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DCの受給時税制は、あるいは退職所得税制は今のままでよいのか
DCの受給時の税制について、再び議論になっています。

多額の退職金が支給される大手企業の社員や公務員にとって個人型確定拠出年金はそれほど得じゃない








このように、得なのかそうでもないのかという議論になるのは、DCの受給時の税制優遇が既存の税制に間借りしていることに原因があります。
一時金受給にせよ、年金受給にせよ、DCに特別の枠が与えられているわけではなく、あくまでも既存の「退職所得」や「公的年金」としての枠内で処理されるに過ぎないため、本来の退職金や公的年金の金額によっては優遇効果がかなり小さくなってしまうことによります。
 私の場合、このまま今の会社に60歳の定年まで勤務したとすると、退職一時金が1600~1700万円(特にテーブルの見直しがなされず、私自身も退職金の増減をもたらす昇降格を今後一切しないとする)。
 さらに、DCの積立金が現在の実績利回りのまま最後まで回ったとすると(現在年率5.8%程度ですから、リスク運用の利回りとしては高すぎず低すぎずといったところのはずです)、60歳到達時には残高が2000~2200万円程度。
 退職一時金だけを受給するなら課税されないですみますが、同時にDCを一時金受給してしまうと200万円超(地方税込み)もの税負担になってしまいます。
 なお、掛金の所得控除による減税分を再運用していますが、これがDC資産と同じ利回りで回っていったとして同時に取り崩すとすると税引き後の運用益がやはり200万円余となり、ほぼ退職所得課税を相殺できることになりますが、逆に言うとただそれだけの効果しかもたらしていません。
 あるいは、DC資産の運用益に対する税制優遇効果(運用益の20%課税が課されないことによるもの)が250万円内外ですから、こちらを相殺してしまうものと考えても結構です。

 年金受給でいくとすると、よく言われる「60~65歳までの5年間で年金受給」というプランにしても、あるいは「公的年金と並行して受け取る」にしても、DCの受給期間中の公的年金収入が年額400万円以上に達してしまい、こちらも税負担が重くなりそうです。


このため、退職金や厚生年金・企業年金等が一定水準見込まれる人の場合は、税負担を最適化するためにいろいろと策を弄する必要が出てきます。
なお、DCを年金受給とする場合は更に社会保険料への影響にも目を向ける必要が出て来ます。

例えば、退職時期を調整する、DCを一時金と年金の併給にする、年金にするにしても更に支給年数の設定を工夫する、等々…。
 「公的年金の受給開始までの穴埋め期間にDCを年金受給する」という、ポピュラーなプランについても、単純に60歳から65歳までの5年受給にするだけだとあまりお得ではありません。
 DCの運用益を加味すると年金収入がかなりの額に上る可能性があるばかりか、65歳未満では公的年金控除も薄いため、税負担が意外に重くなってしまう可能性があります。
 そこで、公的年金の方を70歳まで繰り下げ受給することにしてDCを10年間で年金受給することにすると、(1)期間が延びる分1年あたりの収入額も抑えられ、(2)65歳以上の手厚い公的年金控除も享受でき、(3)非課税運用できる期間が延びることからDCの受給総額の増加も期待でき、(4)繰り下げ受給により公的年金も最大42%増加するなど、色々メリットが出てきます。
 DCの戦略を練る上でも、公的年金の制度知識(繰下げ受給)を持っていると採りうるオプションが増えるものです。



……しかし、果たして、これでいいんでしょうか?



メリットがあるのかないのか分かりづらい・享受が面倒、それで制度の利用が進むのか


もとより、基本的には、商品性や税制・社会保険との兼ね合いなども含め、最適な道を各自が自分で模索していくのは、当然そうあるべき姿ではあります。
制度の認識不足や作戦の誤りなどによって思わぬ損失を蒙ったとしても、それはひとえに自己の資産の防衛に十分な能力や判断を持たなかった本人が責めを負うべきものです。
普通であればそう切り捨ててしまって終わるところです。

しかしながら、ことDC制度に関する限り、そう割り切ってしまって済むものともいえません。
なにしろ、この制度は国策(政府の都合)により推し進められているものです。
公的年金制度にはかなり無理がきている、潰れはしないまでももうあまり手厚くはできない、ついては各自資産形成をして自助努力で備えてくれ、そうしてくれれば飴として税制で支援はするから……そういった筋書きのもと、社会保障体系の再編の一環として拡充されているのがDCです。

「政府がそこまで言うなら」と思ってDC制度を仔細に検証してみたら、既に見てきたとおり税制優遇には色々と制約がある。
人によってはほとんど優遇になっていないかもしれないし、優遇効果を引き出すために複雑怪奇な諸制度の間隙を衝いて策を弄する必要があるかもしれない。
果たして、これで政府の思惑通り「公的年金等の従来型社会保障への依存」から「DCでの自助努力」への移行が進むでしょうか? メリットがほとんど享受できない、あるいは享受するために頭を捻って策略立案が強いられる、そんなことであればわざわざDCを利用する必要はないだろう…こんな風に、意気阻喪して二の足を踏む人が増えても不思議ではありません。
これでは政府の所期の成果は覚束ない可能性があります。「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」とはこのことでしょう。

やはり、DC制度への移行を加速させたいのなら、それによるメリットをより分かりやすいものにすることは不可欠ではないでしょうか。
すなわち、税制優遇体系の見直し、端的に言えば、(既存の税制への相乗りではなくして)DC制度にターゲットを絞った優遇枠の創設です。

既存税制の間借りでは筋が悪い。切り離して新たな枠に整理を


そもそも、DC、なかんづく個人型DCの一時金受給が「退職所得」に位置づけられていることからして、実のところ筋が良いものではない、木に竹を接いでいるような制度設計です。

退職所得というのは、「実体としては、雇用契約に基づいて支払われる給与である」「長期間の勤務分が一括して後払いされるものであり、一時的に大きな収入となる」「退職後(特に老後)の生活の糧となる」という特性を考慮して、一般の所得と区別して特別な税制の対象となっているものです。



さて、個人型DCの場合、退職金と共通するのは「老後の生活の糧」というところくらいで、あとはほとんど重なり合うものではありません。契約によって他人から支払われるものではなくあくまで自分の財布に由来する資産ですし、一時的な大きな収入といっても労務の対価が後払いされているのではなく自己資金の運用終了した成果を手元に戻しているだけのものです。
本質的に退職所得とは相当に性質を異にしているのであり、これを同じ税制の同じ枠内に乗せるというのはかなり無理筋というものです。
単純に60歳到達時に一括支給されるという外形的な類似性を過度に強調しているものといってもよいでしょう。

所得としての本質を見るのであれば、普通の退職所得とは別個の、独立した税制の対象とするのがすっきりします。
企業型の場合は、事業主掛金部分は紛れもなく報酬の一環ですから、従来型の退職所得枠に入れるのも筋が通ります。マッチングや個人型加入などがあるとややこしくなりますが、事業主の拠出額累計と本人の拠出額累計との比率で受給額を按分してそれぞれの税制に振り分けるとか、やりようはありましょう。


従来型の退職所得優遇こそ、他の政策に照らすと縮小でいいんじゃないか。この際雇用慣行にもメスを


さて、退職所得と別枠で優遇枠を用意する、となると顕著な税収減を起こすから国としても飲めない話じゃなかろうか…という危惧はありましょう。
あえて伺います。「退職所得って、そもそも現行の税制優遇を維持するべきものでしょうか?」「退職金という雇用慣行は、そこまでして守るべきものでしょうか?」

退職所得が優遇されているのは、繰り返しますが、
・給与の一括後払いである → 功労金としての性質からすると軽くしてやりたい。それに、一時的に所得が膨らんでいるだけだから、通常の税率を掛けるのも酷である。
・老後の生活の糧である → 今後大きな収入が見込み難い人から税を取るのも酷である
といった配慮によるものです。

一方で、「功労金」としての性格が強調されていることからも分かる通り、雇用の場においては、1箇所での在職期間が長いほど退職金の支給額の伸びが大きくなる傾向があります。
その為、転職すると(仮令現職と転職先での退職金を合算しても)退職金が大きく目減りしてしまう事を恐れ、転職を躊躇わせる要因ともなっています。
このような慣行は、DCやDBにおけるポータビリティの機能の意義が強調される所以でもあります。

ところで、政府は、「一億総活躍社会」とか「働き方改革」といったものを主要政策に掲げています。
同一労働同一賃金、再チャレンジ可能な社会、女性や高齢者の活用、等々キーワードは色々ありますが、端的に言えば雇用の流動化を進めようという方向性と言っても大きな間違いではないでしょう。
過年度の資料(「3本の矢」の成長戦略)の中でも、「労働者が円滑に転職し、適材適所でそれぞれの能力を発揮できるようになります。」という政策が謳われています。


こうした政策方針から見て、退職金をあまり税制優遇するというのは整合性があるでしょうか?
むしろ、これを機会に、退職金への優遇を削減・撤廃していって(その分通常の給与を上乗せする)、長期在職を前提とするような労使慣行の解体に繋げていくという方向性があってよいのではないでしょうか?
転職が普通になるような社会を作りたいのであれば、一般的に長く一箇所にとどまっていた方がメリットが大きくなる(=退職を思い止まらせる要因となる)退職金制度など、真っ先に解体したい雇用慣行でこそあれ、税制優遇(制度存続を後押しする)などもってのほかのはずです。
在職期間が短くなって退職金の額が少なくなれば、別に通常の税率でも問題はなくなります。
若いうちから転退職が起こるようになれば、退職金の「老後を支える糧」という性質も相当に薄れてしまいます。

つまり、雇用流動化を推し進めようという方針と平仄を合わせようとすると、退職金を税制優遇する理由が極めて乏しくなります。
それなら、従来型の退職所得の優遇税制は縮小して、その分をDCなど自助努力に対する税制優遇の拡充に回すという形で整理するのが適当ではないでしょうか。

「退職金を積み立てるのなんかやめて、普通に給料として払い出しなさい。労働者は、これで長く居ること自体に特段得はなくなったから、何か事情があったらどんどん退職・転職しなさい。退職金の変わりに月給が増えたから、それでDCなど自助努力の積立原資に回してもいいでしょう。それをやるなら税制優遇は本当に手厚くします」
こういう方針にしてやれば、労働改革から社会保障改革・投資改革に亘って綺麗に整合すると思います。
財源的にも、DCへの税制優遇拡充の費用は退職金の税負担増で賄えばよい(なお、退職金をなくして給与を増やした企業であれば、給与課税が増える)ということになるので、それなりに目処は付くような気がします。

平たく言えば、一部の企業で行われている「退職一時金から選択制DCへの移行」を、国家全体で行うようなイメージです。

おわりに


DC制度の受給時税制の問題は、老後の保障という観点を強調して退職所得の枠に入れられ、退職金格差の是正といった理由付けで税制優遇に差がつくのが正当化されてきました。
しかし、そのような観点に囚われていて複雑な制度設計にしていては利用に二の足を踏まれ、政府の目指す自助努力への移行が阻害されかねません。
リスクを取って自助努力しようという営みが、縁も所縁もない退職金などとという勤務先の報酬政策によって支援に差が付けられるのもおかしな話です。その行為の価値は変わりないのです。
そして、政府の労働政策に照らしても、退職金という雇用慣行そのものがもはや合理性を欠くに至っています。
税制優遇における格差・煩雑さにスポットが当たりつつあるこの機会こそ、思い切って雇用慣行そのものにメスを入れるときではないでしょうか?
年金・DCに関する政策と労働政策とを合わせ考えれば、そういう方向性こそ実現を目指すべきグランドデザインであるように思えてなりません。
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DC(確定拠出年金) | トラックバック:0 | コメント:0
[ 2017/01/27(金) 15:13 ]

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