米国Vanguardの公式ツイッターにて、学校向けのマネーリテラシー教育プログラムの宣伝が流れてきました。
MyClassloomEconomyというバンガード社謹製の教育プログラムでして、教室内通貨を利用して一つの経済圏を作るというのが基本的な構成になっています。
生徒は、予め幾つか用意された職業に就いて給与をもらいつつ、各種経費を支払ったり買い物やオークションなどで消費したりします。 職業というと大層なようですが、「配布物を配る」「出欠を取る」「備品を管理する」「先生等からの連絡事項を伝達する」など、ごく普通に教室内で見られる内容に過ぎません(他に、「銀行」「ローン業者」など、経済の仕組の運営に携わる係もあります)。 また、良い行い(テストで高得点、課外活動への参加など)をすると賞与、悪い行い(嘘をつく、無礼な振る舞い等)をすると罰金があるなど、道徳教育に関連したメリットデメリットも用意されています。
高学年向けのカリキュラムになってくると、更に「所得税」「固定金利型投資(CD)」「元本変動型投資」「損害保険」といった項目も登場してきます。 教室内経済でどうやって元本変動型投資や保険を扱うのかと思うと、基本的に乱数でシミュレーションするようです。 元本変動型投資は、株式インデックスと債券インデックスを所定の比率(100:0、70:30、50:50などの選択肢から各自選択)で保有するもので、投資銀行係が所定の期日ごとにシミュレーターを回すことで期間内のパフォーマンスが出ます。このパフォーマンスは、1926年から2011年までの実際の結果からランダムに選択されるそうです。
マッチング拠出の仕組を取り入れるというオプションも提案されています。 損害保険は、保険係が所定の期日ごとにシミュレーターを回し、損失の有無・金額が全員(保険に加入している人もしていない人も)に割り振られ、保険に加入していれば損失負担を免れる、という仕組みです。
絶妙なことに、毎月の給与だけでは毎月必要な経費(机に賃借料が掛かることになっています)を賄うには若干足らないようになっており、高学年になってくると税金や保険料も発生しますから、資金の手当てがどうしても必要になります。 そのために、賞与を得られるような「道徳的な行いを続ける」、買い物などでの浪費を避けるなど「支出をコントロールする」、「投資により利益を挙げる」などの取り組みが必要になり、ここに教育効果が出てきます。
教室内での仕事や「道徳的な行い」がお金のためということになってしまうことに、抵抗を感じる人もあるかもしれませんが、教室という場所を度外視すれば一個の社会を管理する仕事をするのに報酬が発生するのはごく当然のことですし、「生活コスト(机代、保険料、税金etc)」を課せられるという仕組も持った中での一環だと考えれば、仕事への責任感を醸成する意味でも悪くないものでしょう。 そもそも、「ごく当たり前の仕事をこなすことで報酬を得る」のは大人だって一緒ですし、それこそが生活の第一の基盤です。
そして投資の必要性がそれなりに高い構成になっていて、その投資先が株式・債券インデックスの過去の実績というのも、投資の効果(一定程度のプラスに収斂していく可能性が高く、一方でばらつきもある)を簡易に実感させる意味ではなかなか効果的な気もします。
いうまでもなく、単純に「インデックス」と言っているだけですから、バンガード社謹製教育プログラムながら「バンガードのファンドに投資」などという鴨の育成的なものではないはずです。(およそバンガード商品で鴨になるのもなかなか難しいですが…)
金融教育のためだけの特別なカリキュラムを組むのではなく、日常の課内・課外活動をそのまま経済の一環としている身近さによって、実際にマネーリテラシーの身につき方は有意に高かったとする調査結果もあるようです。
折しも昨日は金融庁にて積立NISAの説明会が行なわれ(私は業務繁忙のため参加できていません)、①投資教育についてのアクションプランは
→有効な方法は見つかっていないが、まずは金融機関に呼びかけて顧客に説明するようお願いしている 金融庁による「積立NISA」説明会に参加しました(人生もお金も海外分散する話) という質疑もあるなど、マネーリテラシーに関する教育の必要性がいよいよもって強く認識されるようになっているところですが、その基礎作りの教育方法としてこのMyClassloomEconomyという、「仕事」「生活費」「投資」「保険(リスクマネジメント)」などの要素をオールインした教室経済圏の仕組は一つの回答のような気がします。
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