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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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「投資の鉄人」のアドバイスは軸を確立させるための基礎教養
投信の鉄人(馬渕治好・岡本和久・竹川美奈子・大江英樹)を読みました。

本書は、昨年夏に実施された「惑わされない資産運用」と題するセミナーの講演内容を元にした書籍です。
なお、セミナー後に生じている話題(トランプ相場など)にも触れるなど、アップデートされている箇所もあるようです。論旨そのものはまったく揺らいでおらず、純粋に情報・考察の追加です。




著者名からも明白とは思いますが、本書は、言うまでもなく、書名から安易に想像されるような投資においてすぐに、あるいは大きく儲けられる秘訣などというものではありません。
そうではなく、軸のブレなどによる無用な損失を避けるための堅固な基盤づくり、基礎教養に重点を置いたものと言えます。

特に、第1章、馬渕氏執筆の「情報に惑わされない」については、およそ投資活動をしようとする者全てが襟を正して聞くべきものがあると思います。
この章では、まず、情報は利用する人の状況によってどう取捨選択し、どう活用・判断すべきかが異なることを指摘し、誰かの言うことを鵜呑みにするようなことではいけないと戒めています。
そして、金融機関やマスコミなどの流す情報について、一般的なイメージや俗説と対比しつつ、「立場上のバイアスなどはあるかもしれないが、殊更に他人に損をさせることを図ったり、虚偽あるいはいい加減な情報を流したりしているわけではない」ということを論証しています。
その上で、「投資家が市場動向に振り回される傾向があるからこそ、金融機関のお勧めもテーマ型など変な商品が出てくるようになる(そしてそういう人ほど金融機関のせいにする傾向がある)」「投資家は、自分自身に都合のいい情報だけを耳に入れる場合があり、アドバイスが意味をなさないことがある」ということを指摘しています。

怪しい情報がマスコミや金融界隈から出てくるのは、そのような情報を喜んで耳に入れる側にも原因があるとし、
私は、個人投資家のみなさんが自分を磨き、怪しい情報を排斥することでいい加減なマスコミや専門家を追い払って、投資に関する業界を良くしていただきたいと願っています。投資家の方々には、それだけの力があると信じています。
と述べる部分は、真理をついた至言ではないかと思います。

現在、金融庁は「顧客本位の業務運営」を訴えています。そこでは、顧客一人一人の利益に適うサービス提供をすることを要求されますが、そこでは「顧客満足には反する場合もありうる」(例えば、毎月分配は顧客満足にはなるかもしれないが顧客の利益には適わず、顧客本位とはいえない)ということが指摘されています。(参考:これが金融庁のいう顧客本位だ
しかし、これが実効性をもって機能するためには、顧客である投資家の側に、「自分の満足に反するように見える話であっても、本来その方が適切であり有益なのだ」と納得して聞き入れるだけの度量と判断力が要求されることに他なりません。
馬渕氏が指摘するような、「市場動向に振り回される」「自分の都合のいい情報だけを耳に入れる」という投資家の姿勢が続くようでは、いかに金融庁が旗印を掲げ大鉈を振るおうとも画餅に終わることは避けられません。
その意味で、馬渕氏の言うとおり、投資に関する業界を良くする力があるのはまさに投資家であり、また良くないままにするのも投資家の責任であると言ってよいのではないでしょうか。


本書では、馬渕氏のパートでは情報の取捨選択に関する考え方(専門家は専門家ごとに得手不得手のある道具であり使えるところを使えばよい、現場感覚や常識での判断を加えるのも重要、など)が述べられています。
また、第2章以下でも岡本氏・竹川氏・大江氏がそれぞれの専門分野において卓見を披露しています。
特に、第2章の岡本氏による、「株式は本来企業価値の増価を享受するもので、それには長期間かかる(短期的には株価がぶれるが長期的には価値増価に収斂する)」という株式投資の本質の説明は、株価の高低・短期的騰落に捉われず企業価値に着目して成果を挙げた複数の歴史上の投資家たちの実例とともに、目先の株価に一喜一憂したり短期トレーディングに走ったりする傾向のある我々投資家みなが心に留めておくべきものでしょう。


本書は、最初にも述べたとおりあくまで基礎教養的なもので、決して儲けるための技術書ではありません。
しかしながら、本書一冊を通読して骨肉とすることができれば、落ち着いたぶれない態度を維持し利益を無駄に取り逃さず、投資の長期的成功につなげられるだけの思考態度を身につけることができるのではないかと思います。
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良書 | トラックバック:0 | コメント:2
[ 2017/04/23(日) 03:45 ]
[ 最終更新:2017/04/23(日) 03:45 ]

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コメント
本誌、自分も購入しました
どの章も参考になりますね。岡本さん以外は直接お話したり食事したことがありますが、頭がよくて回転が速いですね。

ワインの人と違って、スポンサーに影響されないところが素晴らしいと思います。
URL | 矢向(やこう) #Ji7woxQg | 2017/05/01(月) 12:11 [ 編集 ]

Re: 本誌、自分も購入しました
> どの章も参考になりますね。岡本さん以外は直接お話したり食事したことがありますが、頭がよくて回転が速いですね。
>
> ワインの人と違って、スポンサーに影響されないところが素晴らしいと思います。
コメント有難うございます。
ワインの人にせよ某投信評価会社の社長にせよ、利害関係人だとどうも場合によって変なことを言い出す傾向があって困りものですから、こういう独立系の人々の存在は貴重です。
URL | 安房 #- | 2017/05/03(水) 14:41 [ 編集 ]

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