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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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高いコストを伴って下限保証を付ける運用の意味は、あったのかなかったのか。「低コスト投信+現金」と比べるとどうなのか。
あんしんスイッチを取り上げた記事に、最近結構な数のアクセスを頂いているようです。
  「あんしんスイッチ」…目先は安心かもしれないが

当初設定で600億円以上も資金を集めたなど話題を呼んでいるらしいこともあってか、検索流入で来訪されている模様です(試しに「あんしんスイッチ」で検索すると、かなり上位に当ブログが出てきました)。

折角ですので、もう一本記事を書いてみます。





上がりにくい基準価額


この「あんしんスイッチ」、元ファンドマネージャーの方が端的に纏めている通り、極めて基準価額の上がりにくい構造です。
  プロテクトライン付き投資信託を考える (FUND GARAGE)

株式の比率が、目論見書上で見る限り最大30%程度であるとすると、株式の期待リターンは大体5%程度だと言われていることを踏まえると、資産全体に対しては5%×30%=1.5%程度の押し上げにしかなりません。
もとより、アベノミクスやトランプバブルのようなことが起こればあっという間に20%も30%も株高になってしまうこともありますが、長期平均すると5%程度に戻ってくるはずです。

株による貢献が年率1.5%程度なのに対して、信託報酬が1.44%というのですから、折角の株による利益が殆ど手元に残らないことになります。
債券部分による収益が引用ブログの通り大して期待できないとすると、結局、長期的には殆ど横ばいが関の山(!)ということになってしまいます(株の実績リターンにより若干のアップダウンはありましょうが)。

ダブルウォッチ201707月報
2017年7月分のアムンディ・ダブルウォッチ(同様の運用コンセプトのファンド)の月報から見ると、実際には株式は15%程度で推移しており(20%あれば御の字)、一方で短期金融資産は4割から5割程度で推移していたことが多かったようです。
こうなると、期待リターン上はますますもって厳しくなります。 
※なお、ダブルウォッチの信託報酬は1.296%

実際、基準価額推移を見ても、トランプ就任後の株高がどこにあるのか分からないくらい平坦です。
ダブルウォッチの設定来高値は10372円、フロア価格は9335円に留まるなど、上昇しにくいことは実証されています。

これでは、同様の運用をするのであろうあんしんスイッチにおいて、スイッチが上がる10600円まで基準価額を上げるには極めて忍耐力が要りそうです。
株のリターンが20%に及び、組入れ比率が30%とすると6%の資産上昇効果になり、10600円を達成することになりますが…実際そんなに組入れ比率が高いかどうかも微妙で、「よほど運がよければそうなる」程度の認識で良いかと思います。

一方で、20%程度の株価下落(マイナス1σ程度でしょうか。ちょっと運が悪め程度で起こる規模です)があると、30%組み入れられていると6%の基準価額下落。基準価額最高値から10%下落で繰上償還ですから、ちょっと危険を感じることになるかもしれません。
実際には、先行き見通しが弱気になったり基準価額が繰上償還水準に接近したりするにつれて株式比率を更に落としていくことになるので、一挙に6%下落ということにもならないはずですが、それはそれで、回復相場になったときに大幅に出遅れ、基準価額が停滞したまま信託報酬が引かれるのみ、ということに他なりません。
というか、そのように資産配分を調整してしまうというのは、「リスク資産を高値圏で買い、安値圏で売る」という典型的な悪手そのものではありませんか。

低コストファンドと現金との組合せで十分


さて、資産の毀損を防ぐという意味では、「現金を多く保有し、投信では低コストなものを購入する」という方策があります。

例えば、投信部分として、ダブルウォッチやあんしんスイッチと同じく為替ヘッジ付きになるFunds-i 内外7資産バランス・為替ヘッジ型を使うことを考えてみます。
そして、買付段階で現金比率を40%にしたパターン(ほぼダブルウォッチの短期金融資産比率と同様)や、現金比率60%にしたパターン(ダブルウォッチより現金比率高め)を考えてみます。
このときの、ダブルウォッチ設定時から今年7月末までの期間における結果は下記の通りです。
ダブルウォッチandFunds-i(2)
ダブルウォッチFunds-i内外7資産+現金
60:40
Funds-i内外7資産+現金
40:60
Funds-i内外7資産+現金
60:40 日次リバランス
Funds-i内外7資産+現金
40:60 日次リバランス
株式比率(リート含む)実績15~20%程度40%26.7%40%26.7%
信託報酬1.296%0.324%0.216%0.324%0.216%
実績リターン(年率)2.25%4.33%2.90%4.30%2.86%
実績リスク(年率)2.59%3.99%2.68%3.94%2.63%
シャープレシオ0.871.091.081.091.09

※日次リバランスのパターンは、税金は考慮していません。

ダブルウォッチに比べてシャープレシオ(リスク対比でのリターン)では優位に立っているという結果になっています。
リスク水準そのものも、ダブルウォッチの数値よりは高くなっていますが、年率4%や年率2.6%台と、十分低水準といってよいでしょう。

このような結果になったのは、株式比率の違いなどによる変化もありますが、やはりコスト差による影響が大きいものと考えられます。
なにしろ、Funds-i内外7資産は信託報酬0.54%という低コストで、それが全体の6割とか4割にかかるだけ(残りは現金だからゼロコスト)ということですから、トータルでの信託報酬はダブルウォッチと比べると1%内外に及びます。
このコスト差分がリターン押し上げに寄与した結果、シャープレシオの改善に繋がっていると言えそうです。

もとより、「現金+Funds-i」では、現金がクッションになるとはいえ、損失を10%に留める仕組はありません。
しかし、例示パターンにおける資産全体に対する株式比率は、表にある通り、40%あるいは26.7%に過ぎません。
仮にリーマンショックのような事態が起こって株式が半減になったとしても、20%あるいは13.3%の損失。債券部分でもう少し損失が出るかもしれませんが、いずれにせよ、最大損失は知れています。

それでも損失規模はたしかに一時的にはダブルウォッチやあんしんスイッチを超えます。
ただ、ダブルウォッチやあんしんスイッチが損失を抑えるのは、最終的には単純に「全売却して手仕舞いする」というだけです。
手仕舞いするのですからその後の回復局面には何ら恩恵を蒙りません。

一方で、自分で現金とFunds-iを組み合わせるのであれば、別にFunds-iを売る必要はなく、そのまま待っていればよいだけです。
ただそれだけで、来たるべき回復を享受することができます。

おわりに


結局のところ、ダブルウォッチやそれと同様の運用のあんしんスイッチは、
 ・下落時に株式を売り、上昇したら買うという典型的な失敗パターン
 ・更に下落すると、強制損切りで回復を待たない
 ・これらの仕組みの管理に、株式部分の期待リターンで賄えないくらいのコストを払わされる
というのが特徴といえます。
こうしてみると、長期的な資産形成のために有用な点が見受けられないように思います。

こうした桎梏は、現金と低コストのファンドを組み合わせることで回避でき、長期的には有利な結果をもたらす可能性が高いと思われます。

見た目の「損失限定」に飛びつく前に、どれだけ高い代償を負わされるのか、検証することは不可欠です。
そして、このような「見た目は安心感があるように思わせて、資産形成に繋がり難い」商品を企画・販売する側には、投資家本位の観点から厳しく問われる必要があるでしょう。

特に、販売会社である三井住友銀行は、金融庁の第4回意見交換会において、このあんしんスイッチを「投資への抵抗感を和らげる商品」としてアピールする意向がある旨の発言をしていました。
この商品自体はアクティブファンドですから最低5年経たないとつみたてNISAに入ることはありませんが、『つみたてNISAでドアノックした後にあんしんスイッチに』とか、色々策はあるのかもしれません。
いずれにしても、初めて投資をする人に向かってこのような「抵抗感はないが運用としての効果もない」商品を売り込んで信託報酬を得る、などとは、本当にやるようであれば明確に投資家本位の精神に反すると指摘しなければならないでしょう。
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「最大損失限定型」投信 | トラックバック:0 | コメント:0
[ 2017/08/22(火) 07:30 ]
[ 最終更新:2018/02/11(日) 17:43 ]

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