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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
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選択制DC導入は役員の扱いに注意 (やはり制度の本筋でないゆえの不利益か)
勤務先で購読している「週刊税務通信」で、いわゆる選択制DCについて興味深い記事がありましたので、紹介します。
選択制DCを導入しようとされている会社経営者や労務担当者、あるいはコンサルタントの方々は参考にしていただけると幸いです(そんな人がここに来ているかどうか知りませんが)。

なお、記事の冒頭部分だけは税務研究会のサイトに載っています。




記事の結論


選択制DCを導入している場合、役員がこれに加入すると、当該役員の役員報酬について法人税法上損金不算入が生じる場合がある。(報酬を支払ったのにもかかわらず損金として認めてもらえず、課税所得に加算される結果法人税が増える)

結論に至る背景


役員報酬に関する税制


そもそも、法人税法上、役員報酬というのはおいそれと損金として認めてもらえません。
ごく平たく言えば、無制限に損金算入を認めてしまうと、利益の増減に応じてお手盛りで役員報酬を増減することで所得の額を調整し、税額を自由にいじることができてしまう(特に、利益が出すぎたときに税金を抑える手段になる)ためだと言われています。
株式会社の場合、株主総会で少なくとも総枠を決議する必要があるなど会社法上の制約があるため、必ずしも好き勝手にお手盛りできるわけでもないですが…

損金に算入できるのは、基本的に以下のいずれかの類型に当てはまる場合に限られています。
(1)定期同額給与:定期的に定額の報酬を支給するケース。「事業年度開始後3ヶ月以内に1回」「役員の職掌変更などやむを得ない事情」「業績の大幅な悪化」のいずれかの場合に限り改定可能。
(2)事前確定届出給与:税務署に支給スケジュール(支給予定日と予定額)を届け出て、そのスケジュールを寸分違えずに支給するケース。スケジュールと異なる支給をすると、全体が損金不算入になる恐れがある(結果的に定期同額給与に相当する場合、その部分は損金算入できる)。「役員の職掌変更などやむを得ない事情」「業績の大幅な悪化」のいずれかの場合に限り届出再提出により改定可能。
(3)利益連動給与:利益に関する指標に基づいて、予め定めた算式により報酬が連動するケース。

選択制DCとは


選択制DCとは、企業型DCの一種で、「前払い退職金を今現金で受け取るか、DCに加入してその掛金に充当するか」を各人が選択する制度です。
そして、その「前払い退職金」には、従前の給与の一部を振り替えて充てるケースが多くああるようです。この場合、DC加入を選択すると、その分だけ給与が減少することになります。(DC掛金を含めたトータルで企業の負担が基本的に導入前と変わらない仕組み)

選択制DCに役員が加入することによる影響


さて、選択制DCは企業型DCですから、事業所に使用されている厚生年金被保険者であれば加入資格があります(規約で別途の定めがある場合はそれによる)。従って、使用人(従業員)だけでなく役員も対象となります。
この場合、役員が選択制DC加入を選択する場合、「従前の給与の一部を振り替える」パターンであれば、必然的に役員報酬が減額されることになります。
ところが、法人税法に照らすとそれは困ります。おいそれと役員報酬の変更をすることはできないのでした。

この場合、仮に従来定期同額給与として取り扱っていた会社であれば、「事業年度開始から3ヶ月以内」であれば定時改定の一部ということにすれば何とかなる可能性が高いですが、3ヶ月を過ぎていると問題になります。
この場合、業績悪化は特に関係ないはずなので、「役員の職掌変更などやむを得ない事情による改定」になるかどうかが問題ですが、税務通信の記事によると、どうやら「やむを得ない事情による改定」とは認めないという取扱になるようです。
そうなると、役員給与に関するQ&AのQ4に解説のケースに準じ、選択制DC加入による減額後の役員報酬額をベースに損金算入額を計算することになります。従って、加入前に支給されていた役員報酬のうち、後に減額されるDC掛金相当額部分は損金不算入になると考えられます。

従って、税務通信の記事では、選択制DCの導入は、事業年度開始後3ヶ月以内の時期にするよう薦めています。

なお、事前確定届出給与として取り扱っていた場合、届出のスケジュール通りの支給がなされないことから、変更後の支給状況が定期同額給与に該当しない限り、役員報酬全体が損金不算入になる可能性があります。

このような事態を避けられないか?


なお、このような損金不算入の事態を避けられないか少し考えてみました。

まず、使用人兼務役員であれば、役員報酬でなく使用人としての給与の部分を調整するという立て付けにすることで何とかなるのではないかと思います。
但し、代表取締役に関しては使用人兼務がありえないため、このような手は使えません。

次に、DC掛金部分も役員に対する経済的利益の供与であるから役員報酬とみなして計算するべきだと主張できないか考えてみます。
実際に、役員に対する社宅の賃貸の場合における「通常の賃貸料と役員から取っている社宅費の差額」などにおいて、経済的利益として役員報酬とみなされる(その結果、「合計額で見ると定期同額給与や事前確定届出給与から外れる」とか「役員報酬決議の額を超えるから過大給与である」などといった理屈で損金否認される場合がある)ことがあります。
仮にそれとパラレルに考えて、上記のようなj経済的利益扱いの主張が通るとするならば、選択型DC加入による減額後の役員報酬とDC掛金との合算で見ることで、「定期同額」や「事前確定届出」の要件を満たすことができそうです。

しかし、以下の通達及び政令を見ると、その理屈も通らないようです。
法人税法基本通達
(給与としない経済的な利益)
9-2-10 法人が役員等に対し9-2-9に掲げる経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとする。(平19年課法2-3「二十二」により追加)
所得税法施行令
(確定給付企業年金規約等に基づく掛金等の取扱い)
第六十四条  事業を営む個人又は法人が支出した次の各号に掲げる掛金、保険料、事業主掛金又は信託金等は、当該各号に規定する被共済者、加入者、受益者等、企業型年金加入者又は信託の受益者等に対する給与所得に係る収入金額に含まれないものとする。
四  確定拠出年金法 (平成十三年法律第八十八号)第四条第三項 (承認の基準等)に規定する企業型年金規約に基づいて同法第二条第八項 (定義)に規定する企業型年金加入者のために支出した同法第三条第三項第七号 (規約の承認)に規定する事業主掛金(同法第五十四条第一項 (他の制度の資産の移換)の規定により移換した確定拠出年金法施行令 (平成十三年政令第二百四十八号)第二十二条第一項第四号 (他の制度の資産の移換の基準)に掲げる資産を含む。)
選択制DCはあくまで企業型DCであり、その掛金はあくまで事業主掛金ですから、所得税法施行令64条1項4号により役員・従業員の給与所得になる余地がありません。
給与所得にならない以上、法人税法基本通達9-2-10により、経済的利益として役員報酬に加算する事もできないことになります。
結果、選択制DC加入により役員報酬が変動してしまったことを否定することはできないと考えられます。

所感


「給与を減らしてDCに充てる」という選択制DCの特徴が、役員報酬の損金算入の制度に影響を及ぼして課税リスクを発生させるというのは、よくよく考えてみれば当たり前の理屈ですが、正直言って盲点でした。(単に、私が特別に迂闊だっただけという可能性も否定はできませんが)
このような事実が知れると、選択制DCの導入・加入選択を躊躇する会社も出てくるかもしれません。単に「事業年度開始から3ヶ月の期間内(定期同額給与の場合)」「事前確定届出の提出前(事前確定届出給与の場合)」に導入・加入の時期を持ってくればよいだけですし、それができないとしても最初の1年だけ税額の負担を甘受すればいいだけですから、実は大した痛手でもないのですが、それにしても心理的な抵抗感は多少生じさせる可能性は否定できません。
確定拠出年金への加入を国が後押ししているはずのときに、税法のほうにこのような桎梏が残っていることは一見すると意外でもあり、政策の一貫性を欠いているように見えなくもありません。

しかしながら、そもそも「選択制DC」なるものが本来の企業型DCの制度趣旨に照らしてどうなのかという点を考えると、些か話が変わるかもしれません。
企業型DCは、本来は退職給付制度の充実のためのオプションのひとつとして導入された制度です。もっぱら福利厚生の向上というベクトルで活用されるのが本来の趣旨だったのではないかと思います。
ところが、選択式DC制度は、現在の給与の一部をそのままDCに付け替えるだけで、加入者にとって加入前と比べて特に利益が増えるわけではありません。給与の減少により社会保険料のコストが削減される利点がありますが、「そのコスト削減だけを目的に安易に導入される場合もある」という指摘もあり、「厚生年金の減少に繋がったり、健康保険・雇用保険・残業代などの算定基礎が下がってしまう」(福利厚生が却って下がってしまう)点も相俟って、批判の強い形態でもあります。
要するに、企業型DCの形式を借りていながら制度本来の趣旨とは乖離もある、一種の鬼っ子ともいうべきスキームです。

そう考えると、国としてもわざわざ法人税法の役員報酬課税の部分の取扱を曲げてまでこのようなスキームを支援しようとまでは考えないのもやむを得ないかもしれません。
やはり、本筋は現行の給与に純粋に上乗せして掛金を拠出するという形態でしょうから、そちらを使うようにしてくれといったところでしょうか。
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DC(確定拠出年金) | トラックバック:0 | コメント:0
[ 2017/09/27(水) 03:59 ]
[ 最終更新:2017/09/27(水) 03:59 ]

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