個別の販売会社として見れば、値下げに同意せず信託報酬の高いままの商品を売り、投資家の利益を犠牲にしても自社の取り分を維持しようとするのは顧客本位の業務運営に悖る話というほかありませんが、膨大な販売会社を相手に交渉しなければならないという運用会社側の困難は是非もないところ。
しかも、届け出や紙の印刷が増えるとなるとあっては猶更……(slimであれば紙の印刷は必要ないので、だから比較的信託報酬改定がしやすいのでしょう)
一方で、ゆうちょ銀行のように、従来型emaxisの取り扱いを中止して、より低コストなつみたてんとうに切り替えるところもあります。
これは、投資家にとっては紙媒体の資料や店頭でのレクチャーが受けられる点は変わらず、税制などの資料が充実する上に信託報酬が低減するなど、従来型emaxisより純粋にメリットが増大するだけのはずですから、「顧客本位」の意識が高い販売会社といえます。
三菱UFJ国際投信にとっては、やる気のある販売会社に向け、このように信託報酬引き下げではなくつみたてんとうへの切り替えを働き掛けていくのが現実的な解になっていくでしょうか(既存のファンドに扱いを変えるだけなら、資料の改定だのなんだのの手間は大きく減りますから、かなり楽な作業になるはず)
指数使用料は、探してみると野村アセットのETFの有価証券届出書に書いてありました。主なものをまとめてみます。
ここに挙げた料率は、あくまでも各指数業者と野村アセットとの間の取り決めであって、交渉次第では異なる料率になる可能性も当然にあり得るところでしょう。
それにしても、先進国株式の信託報酬が0.1%程度になっている現況にかんがみると、MSCIコクサイの0.05%とかダウの0.06%という数字は、単純に言って指数使用料のせいでコストが5割増し6割増しになってしまう(NASDAQ100に至っては8割増し!)ということですから、たしかにかなりの足枷に感じさせられます。
コスト引き下げのためにここに注目する動きが出てくるようだと、今後更に投資家のパフォーマンス改善の為にも大きな効果が出てくるかもしれません。
インデックス投信では最低コスト以外に生き残る道はないという現状認識は、流石に、正鵠を射ています。そして、そのために先手先手を打っていくのは極めて頼もしく感じられます。
懇親会で、代田取締役が話していた内容です。
運用報告書に表示されていないコストがあるというのは意外でしたが、売買執行の仕組みを聞くと、一応、なるほどと思います。
売買価格に織り込まれているとなると、当然、会計処理を考えるとB/Sにおいて証券の取得原価に加算され、P/Lにおいて有価証券評価・売買損益にマイナスのインパクトを与えるという形で内包されてしまうわけですから、費用明細の中にもそのコストを表示してしまうと実質的に二重で開示することになり、表の間で整合性が取りにくくなります。
また、織り込まれているコストを、本来の証券価格と切り離すことが可能なのかどうかという問題もありそうです。
一筋縄で行かないのは確かなようです。
また、こういう問題がある事が分かると、逆に、「配当込みベンチマークから費用明細に記載の費用を引いても騰落率とかなり食い違う。なぜ?」という疑問に対する回答の一要因として腑に落ちる面もあります。
さはさりながら、一方、エージェント取引だと売買手数料が費用明細に載り、相対取引だと売買損益の中に織り込まれる(費用明細には含まれず、結果、費用が少なく表示される)という風に、実質的にはコストが発生しているのには変わりがないのに開示上の扱いが変わってしまうのは片手落ちな感があり、違和感を覚えるのは否定できません。
費用の算定については、
iシェアーズ・コア MSCI 先進国株(除く日本)ETFにて、以下のような記述があることが注目されます。
執行コスト相当額は、以下のa.~d.を主たる計算要素として、a.とb.の差分またはc.を、d.に応じて加重平均することにより算出することを基本とします。
a.当ファンドの純資産総額を算出する目的で組入銘柄を評価する価格
b.組入銘柄を売買する場合の推定取引価格
c.組入銘柄等の取引に伴い別途徴収される手数料、税金その他の取引コスト
d.組入銘柄の当ファンドにおける組入比率
この記述は、直接的には、当該ファンドを設定あるいは解約する際に、信託財産留保額に近いイメージで別途徴収する金額を算定するためのもので、ファンド内部の運用コストというわけではありません。算出される費用も実績というよりは概算の性質を持つものでしょう。とはいえ、売買執行価格に含まれるおおよそのコストを切り分けて算出する方法として、参考にはなりそうです。
コストの算出としてはこういった方法で概算しつつ、参考情報として開示するなどの方策はあってよいだろうとは思います。
マーケットインパクトまでとなると更に困難になるかもしれませんが、少なくとも、手数料相当のコストくらいは実態に合った表示をすることが、投資家にとってもより正確な理解と評価をすることができ、顧客本位につながるのは確かです。