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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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毎月分配による引き出しながらの運用が合理的…とは、やはり考えられませんでした
金融庁が不利さを指摘しているばかりか、市場でも資金流出傾向が顕著になってきている毎月分配型投信ですが、なぜか、今になってこれを擁護するかのような論説が出てきました。

退職後は運用しつつ引き出す 「タコ足投信」悪くない

論旨は、どうやら、以下の2点に纏められそうです。
  • 退職後の「資産活用世代」は、元本を引き出していって生活費に充当するのであるから、タコ足自体は容認してよい。運用しながら取り崩す分、資金減少を抑制できる点で十分に意義がある。
  • 取崩し額は資産に対する比率で考えるのがよく、分配金もできればそういう考えのもとに調整されるのが理想


しかし、いずれを考えてみても、毎月分配型の優位性ないし合理性を裏付けるには至っておらず、むしろ不合理であることを強調する結果に終わっているのではないかと感じます。
以下、順次検討します。



取崩しを容認するからといって、なんでも取り崩せばよいというものではない


まず、資産活用世代は資産の引出・減少を容認するものであることは異論の余地がありません。
言うまでもなく、山崎元氏といえば毎月分配型投信否定派の代表選手ですが、その山崎氏が考案した人生設計の基本公式老後設計の基本公式は、現有資産を想定年数の後に残高ゼロ(もしくは想定する残高)にまで落としていく過程を計算するものです。従って、当然にその年数の間に「タコ足」が発生することは前提とされています。
その意味では、本記事に言う
実はD世代のお金との向き合い方では、投資の原資を生活費として引き出していくことが求められているのです。雑な言い方かもしれませんが、あえて「タコ足」をしようということです。
という認識は共有されているものとも言えます。

タコ足は容認してもよいのですが、だからと言って、それを毎月分配型投信という形で実行するというのは話が飛躍しています。
取崩しをするだけなら、何も毎月分配型でやるのでなくても、無分配型投信を自力で売却するという方法もあれば無リスク資産を取り崩す方法だってあります。
そして、少なくとも現行の商品環境では毎月分配型は無分配型に比べてコスト高である傾向が強く、そのため資産が余計に削り取られてしまうことになります。
本記事では、運用しつつ引き出す理由を「資産の寿命を延ばす」「資産の減り方を抑制する」と表現していますが、それなのに資産を余計に削り取られる(資産の寿命を縮める)コスト高な毎月分配型投信を利用するとしたら、そこに矛盾を感じないのでしょうか。

毎月分配型を利用した取崩しは、上記の意味で不利であるばかりでなく、不合理でもあります。それは、資産売却のタイミングや規模を調整できない点です。
毎月分配型(隔月でも四半期でも同じですが)では、分配するタイミングに合わせて、定期的にファンド内の株式や債券を売却して現金化することになります。たとえ、相場の下落局面など売却せずに保有継続するのが有利な局面であっても、関係なく一定額を売却・損失確定させられます。
一方、分配金を利用せず自力で取り崩す方式であれば、なにも不利を押してリスク資産を売却することはありません。リスク資産が軟調であれば無リスク資産の方から多く取り崩し(→リスク資産の口数を残せる)、リスク資産が好調であればリスク資産の方から多く取崩し(→利益確定、現金を維持)といった具合に、資産全体のバランスにも目を配りつつ有利な取崩し方を柔軟に実行できます。
どちらが合理的な運用・取り崩しでしょうか?
なお、
 銀行に預金をしてそこから引き出すよりは、投資信託で運用しながらそこから引き出す方がよほどいい方法だと思いませんか。
と述べられていますが、別にどちらか一方からしか引き出してはならないわけではありません。今述べたように、銀行(無リスク資産)からも投資信託(リスク資産)からも、好不調を鑑みて配分を調整しつつ引出を併用すればよいだけです。
どちらか一つからしか引き出せないかのように前提を置きつつ「投資信託からの引き出しの方が有利」としてしまうのは結果としてミスリードになっているように思います。


結局、「タコ足でもよい(むしろそれが必要)」という前提は正しいものの、「だからそれを実現するために毎月分配型」という「だから」の部分が十分に繋がっておらず、毎月分配型の優位性・合理性を立証できていません。

取崩し額の調整に分配金を嵌めるのは色々と無理難題


資産の取崩し額を、資産のの残高の一定比率で考えるというのは極めてオーソドックスな考え方の一つです。現存の毎月分配型投信が、資産残高の増減と関係なく分配金を出してしまうので資産を毀損しているという問題認識も正当です。
しかしながら、「資産残高の比率によって払出額を決める」機能を投信の分配金に求めようとするのは、かなり難しい要求と言わざるを得ません。
そもそも、ファンドの受益者は全財産をその一つのファンドに集中させているわけではありません(たまにはそういう人もいるかもしれませんが、稀でしょう)。別のファンドを持っていたり、個別株を持っていたりするかもしれませんし、不動産収入があるかもしれず、もちろん無リスク資産だってあるでしょう。
ファンドマネージャーにはそうした受益者の資産の全容も分からず、他のどの資産からいくら引き出しているかも分かりません。そんな状況では、果たして当該ファンドから残高の何%を取り崩して分配金とすればよいのか決めようがないでしょう。
また、受益者ごとの総資産の全容が全受益者分分かったとしても、総資産の何%を取り崩すかということ自体、想定する余命や生活水準、資産規模などによって一人一人異なります。投資信託では分配金の決定は全受益者一律の設定にする必要がありますが、そんなことは不可能になってしまいます。
総資産の一定比率を取り崩すという機能を分配金に持たせるのは不可能と言って差し支えなさそうで、受益者側が自分で取崩額・方法を決める必要があるということにならざるを得ません。仮に自力で決めるのが難しいとしても、IFAやFPに相談するなりロボアドを利用するなり、投信の分配金とは別個独立の、資産全体を見渡して判断材料にできるサービスを利用するのが合理的です。

さらに、代替案として
そこで必要な年間引き出し額が大きく変化してもいいように、分配金は十分に少ない額に固定し、その差額を資産から別に引き出すようにするのです。毎年の必要額を、分配型投信の分配金に追加して、元本から引き出すことを考えてみましょう。
と述べていますが、これはかなり分配金の根本的な意義を疑わせるものです。
というのも(そもそも「十分に少ない額」なるものを決定するのはやはり資産の全体像が必要であり、現実的でないという問題を横に置いても)、最初から分配金だけで引き出し額を賄えない前提であるとすると、どのみち自力での売却が必要となるのですが、それではそもそも分配金が出る意味は何なんでしょうか?
どうせ売却作業が必要になるのであれば、分配金など初めから出さず、引き出し額を全て自力での売却で賄うことにしても手間は同じことです。むしろ、無分配型であればコストも安くなる見込みが持てるなど、受益者にとって有益な結果になりそうです。
結局、本記事の論説は、資産の引き出しを定率で調整するという目的に向けても、毎月分配型投資信託ではその役目を担えないということを立証してしまっている格好になろううかと思います。

おわりに


以上のように、記事全体を通じて、資産取崩しの考え方そのものには頷ける指摘も多くあったにもかかわらず、毎月分配型投信に関する認識については全く合理性を見出すことができず、むしろ「かなり使えない商品である」ということを根拠づけてしまっている個所さえ見受けられる始末でした。
筆者は過去に紹介した著書がある有識者であり、なぜ今回のような記事が出ることになったのか大変困惑を禁じえませんが、本記事によって分配金頼りのプランニングが合理性を持ち難い点を改めて再確認できたことは確かです。
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[ 2018/06/27(水) 03:51 ]
[ 最終更新:2018/06/27(水) 03:51 ]

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