インデックスファンドの純資産の拡大につき、ファンドラップの貢献が大きくなっているという記事が出ています。 パッシブファンド、意外なけん引役
インデックスファンドの純資産額のシェアが、「一般向け」「ファンドラップ専用」「DC専用」の分類別にグラフで示されており、特に2014年ころからファンドラップ向けが大きく伸びている様子が分かります。
なお、「一般向け」の純資産額を見てみますと、2008年6月では3.3~3.5兆円程度?(全体の純資産が4兆円余り、シェアが80%強)、2018年6月では4.1兆円程度(全体の純資産が9.1兆円、シェアが45%)と、意外に伸びていません。この間の円安・株高によって評価益が出ているであろう影響も鑑みると、純流出入という観点ではどうなるんでしょう…? 今後はつみたてNISAの影響で純資産残高ベースでも着実に伸びていくことを期待したいところではありますが、さて…
記事中では、「コスト意識の高まりからDCやラップに裾野が広がっている」としています。
確定拠出年金では2017年1月の「iDeCo」スタートが初心者でも運用しやすいパッシブファンドへの注目を高めるきっかけになったほか、ファンドラップではコスト意識が高まる中でパッシブファンドが関心を集めている。委託会社のコスト引き下げ競争などから一般向けのパッシブファンドの方が注目を集めることが多いが、低コスト投資の裾野が確定拠出年金やファンドラップなどに着実に広がっていると言えるだろう。 そして実際、楽天証券の楽ラップを代表に、インデックスファンドを組み込み対象とするファンドラップは増えています。 大手証券や銀行などでも、インデックスファンドを中心とするコースが用意されていたりもするようです(アクティブファンドを使うコースより諸経費が低廉だったり最低投資額が小さかったりする場合もあります)。
ただ、低コストを志向するのなら、そもそもファンドラップでインデックス投信を利用すること自体にいささか不整合な感は否めません。
もとより、ファンドラップの中で高コストなアクティブファンドを組み込まれるよりは、低コストなインデックスファンドを組み込んでくれた方がコスト差分だけ有利な運用となることが期待可能ではあります。 ただ、それにしたところで、そもそもラップ口座にかかる費用(一任手数料など。体系や名称は販売会社により異なります)が信託報酬のほかにかなり重くのしかかってくるため、相当不利なハンデを背負っていることは理解するべきです。
ラップ口座そのものに係る手数料は、「コストが低い」代表である楽ラップの場合で0.702%(固定報酬の場合)、一般の証券会社や銀行だと1%を超えてくるケースも見受けられます。 他サイトで調査された、野村証券の事例。 ポートフォリオを組むのが人間のマネージャーやコンサルタントであれ、ロボアドバイザーであれ、有利な資産構成を決定することができるのかは疑問であること、自力でのインデックスファンドの組み合わせやバランスファンドの利用でコストを低廉に抑えられることを考慮すると、このファンドラップのコストの不利さは際立ちます。
インデックスファンド組合せ、あるいは8資産均等型など固定型配分のバランスファンド利用だと信託報酬0.2%内外でポートフォリオが組めます。 また、目標リスクを設定し、適宜再計算・リアロケーションする機能が備わったタイプのファンドでも、emaxis最適化シリーズやたわらノーロード最適化バランス/スマートグローバルバランスなど、0.54%程度で可能となっています。 こうしてみると、ファンドラップには機能的に固有の利点が見出し難いにも関わらず、コストの不利は際立つという印象です。数年前までであれば、バランスファンドの種類も今ほど豊富でなく、コストも数段高かったので、これほどの差は付かなかったのでしょうが…。
金融庁が家計の安定的資産形成のためにインデックスファンドを有力な道具としているのは、「広く分散投資されること」の他、「信託報酬が比較的低廉で、長期の運用成果に影響を及ぼす度合いが小さい」ためというのが大きな要因です。 ファンドラップの中でインデックスファンドを買うというのは、「低コストであるため資産形成に適している」商品を使いながら、「余計な(特に有利な見返りが約束されるわけではない)コストを負担し、長期の運用成果に悪影響を及ぼし、資産形成に不向きなものにする」という、かなり矛盾した行動であると言えます。
投資家としては、そもそもインデックスファンドというのがどういうものでそれを使って何をしようとしているのか、ラップというのはそのファンド特性や目的に照らして適合するスキームなのか、をよく理解しておきたいものです。 また、販売会社も、ファンドラップでインデックス投資を売るという、一見とっつきやすいようなイメージを与えつつやっていることが矛盾だらけという営業活動は、果たして顧客本位と言えるのか(長期投資に適したファンドであるというイメージで実は長期投資に適さないコスト体系で売る、誤認を与える商法とも言えます)、大いに疑問です。
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