本数制限対応に関して動向が注目されていたSBI証券の個人型確定拠出年金ですが、とうとう商品除外案が提示されました。 運用方法の選定・提示に関する基準の見直しに伴う除外予定ファンドのご案内
投資信託から26本、元本確保型から3本の除外となっています。 除外候補の中には、EXE-iの債券&リート、三井住友DC外国債券インデックスなど、過去にDC内で保有していたことのある商品もあり、やや感慨深いものがあります(今現在保有中の商品はありません)。
除外案及び残る商品の一覧を見てみますと、各資産クラスとも、できるだけ最安のファンドを残すことで「無駄なく」投資機会を確保しようとしていることが窺われます。 日本株は日経225・TOPIX・TOPIX100・JPX400をそれぞれ残し、先進国株式や新興国株式についてもMSCIとFTSEを残すなど、投資戦略への配慮が見られます。 一方で、同じ指数に連動する割高なファンド(日経225ノーロードオープン、MHAMTOPIXオープンなど)はほぼ切られています。これはほぼ予想通りで、明確に不利なファンドを排除するだけのことですから、支持を得るのに妨げはないでしょう。至極妥当な判断といえます。
一方で、意外な除外も見受けられます。
外国債券クラスは、比較的最近追加されていた三井住友DC外国債券インデックスファンドを除外し、野村外国債券インデックスファンド(確定拠出年金向け)を残す提案がなされています。両ファンドとも信託報酬は同程度でしたから、どちらを残してもいいようなものでしたが、ごくごく僅かに野村の方がパフォーマンスが良かったからでしょうか?
 ↑確かに、いずれの期間でも野村の方が僅かにトータルリターンやシャープレシオが良い。 しかし、SBI証券の個人型確定拠出年金における7月の購入金額では、三井住友DCのファンドは元本変動型の中で10位につけており、相当支持を集めています。信託報酬も差がなく、パフォーマンス差も僅かとなると、あえて人気の高い商品の方を除外するというのはなかなかハードルが高くなることも予想できます。なぜ除外するのか、困難な説明が必要になりそうです。
外国株式クラスでは、ラインナップ中で信託報酬最安(0.20412%)のDCニッセイ外国株式インデックスが除外<残留されるのは当然として、なぜか、信託報酬が0.864%もする三井住友トラストのDC外国株式インデックスファンドが残ることになっています。同じMSCIコクサイをベンチマークにする者同士でこのような重複が生じるのは理解に苦しむところです。
 ↑ニッセイと聞くと反射的に乖離を気にする人もいるかもしれませんが、いくらなんでも、ここまでのコスト差を覆すような事態にはなっていません。きちんと有利なリターンになっています。 一応、三井住友トラストのファンドの方もなぜか7月の購入額ランキングが11位につけているので、人気はあるような結果になっていますが、ニッセイのファンドと名称が酷似していることによる誤設定というオチもありそうで、どこまで・どういう理由で本当に支持されているのかが気になるところです。 DCニッセイは堂々の購入額1位と、より強固な支持を得ていることですし、コスト差で明確な有利不利が付いてしまっていることも容易に説明可能ですし、三井住友トラストのファンドを除外提案してしまっても理解を得ることは難しくなかったような気もするんですが。
前述のようにできるだけ資産クラスへのアクセス機会は残すようにしているのは見えますが、それでもなおアクセスが絶たれてしまっているものもあります。 ヘッジ付きの外国株式&外国債券は商品が消滅する提案になっています。インデックスファンドとして日興のファンド、債券アクティブファンドとしてSBIのベタインがありましたが、残らず除外提案です。為替ヘッジコストという厄介な問題を抱えているとはいえ、為替コストを排除できる選択肢があったのは貴重でしたし、実際にヘッジ株式は7月の月間購入額15位でしたからそれなりに支持も集めています。この辺も除外を納得してもらうには相当丁寧な説明と説得が要りそうな気がします。 また、ハーベストアジアフロンティア株式の除外によりフロンティア株式が、EXE-iグローバルREITの除外により新興国リートが、いずれも手の届かない資産クラスとなります(残っているリートファンド及びバランスファンドでは、国内と先進国リートのみ)。これらのクラスへの投資をしていた向きは、今後はNISAや課税口座での対応が必要になります。
ところで、EXE-i、ベタイン、ハーベストアジアフロンティア株式といったファンドはSBIグループが設定しているファンドですから、これらのファンドを除外候補にするというのは、グループ会社の利益を顧客の利益に優先させてはいないということの表れとも言えます。 その意味で、運営管理機関として顧客本位の態度を貫いているということは言えるかもしれません。
バランスファンドでemaxis最適化バランスが除外候補になるのは意外でした。長期運用である年金の場で、「リスク水準を一定値にコントロールする」という需要は低くないものと思われ、理屈としても尤もですから、ある意味これが一番の衝撃提案かも知れません。むしろ資産配分(リスク値、期待リターン)を勝手に変えてしまうターゲットイヤー型の方が不要ではないか、という気もするんですが…とは言っても、ターゲットイヤーまで寝ているつもりでセレブライフストーリーを買っている人から見れば、強制的に途中でそれを止めさせられる事こそ迷惑なのも間違いないので、なかなか難しいところではあります。
商品の除外には、当該商品保有者の3分の2以上の賛成が必要となっています。 その為、除外提案が真に顧客のための有利な方策である(当該商品が運用上不利であり、よりよい代替策を採用することでもっと有利な運用になる道がある)事を納得させることが欠かせません。 今回の提案のうち、「同一資産クラスで重複しているものの整理」については、より高コストなものを除外して低コストなものに乗り換えてもらうものですから、説明して納得してもらうことは難しくないはずです。妥当な選択と言えます。 一方で、「意外な除外」として挙げた例などは、商品として合理性が無いとは言えず、それなりに支持している顧客も多いことが窺われるので、かなり真摯に向き合って説明していかないと所要の賛成票を集めることが覚束ない状況にもなりかねません。 SBI証券及びSBIベネフィットシステムズの油断のない対応が試される局面といえます。
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