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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。 以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。 投資関係中心に語ります
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「無責任な電話」の話に乗る無責任な投資家 |
講談社のマネー現代に興味深い小説が掲載されています。 新人時代の「無責任な電話」で顧客を苦しめた証券マンの後悔 東京マネー戦記【6】1999年夏
この小説は、証券会社の社員の回想形式で語られる短編シリーズで、その第6作目に当たります。 今回は、1999年、市場で大幅な金利変動が起こっていた頃を舞台にします。 語り手の勤務する証券会社の顧客から、「市場環境の変化で今後の運用に迷っている」という相談の電話が掛かってきて、語り手は本来のその顧客の担当ではなかったものの、成り行きで適当な見通しを語ってみせます。 それから数か月後、語り手はそのような話をした相手のことも忘れたまま客先訪問に行くと、事もあろうにその客と再会する、というストーリーです。
まず興味深いのは、この顧客の工藤さんが語り手からコメントを聞いた時の反応です。
ぼくが深刻な言葉を並べているにもかかわらず、先方の反応はどこか力強かった。ようやく聞きたいことにたどり着いたという、安心感のようなものだろうか。電話を切るときに耳にした「ありがとうございました」という言葉が、何度もぼくの頭のなかで響いていた。 まともな根拠がどのくらいあったのか無かったのか定かでありませんが、金利が3%あるいはそれ以上の水準に上昇する可能性があるという深刻な見通しを聞かされつつ、喜び感謝しています。 そればかりか、保有していた債券をその見通しに則って売却してしまったようです。
どうも、電話していたときの工藤さんの態度・反応からは、ある意味「背中を押してほしかった」という気持ちがあった節が見受けられるような気がします。 「いいアイデアはないだろうか」と言いつつ、実は本人に一定の期待あるいは不安があり、それに沿ったコメントを聞かされるとそれに飛びついてしまう。いわゆる確証バイアスに引っ掛かっているようです。(確証バイアスについては、行動経済学の一内容として、たとえば投資賢者の心理学(大江英樹)などに解説されています)
そして、残念ながら、この投資判断は見事に失敗に帰したようです。売ってしまったそのタイミングが大底だった、というのはよくある話です(^^;
F社は、金利上昇を機に保有する債券の多くを処分したという。売却することでリスクを減らすことはできたが、安値で売却したので多額の損失が残った。しかも予想は外れて、その後金利はふたたび低下している。
そして気になるのは工藤さんの反応なのですが…
金利は上がるんじゃなかったのかよ。工藤の目に半年前の電話のやり取りが思い浮かぶまで、それほど時間はかからなかった。 お前はプロフェッショナルとして恥ずかしくない仕事をしているのかよ。その目は、ただ投資家に近づきたいために浅はかな発言をした、ぼくに対する嫌悪の念に満ちていた。 たしかに、語り手のアドバイスもおよそ誠実であるとか責任があるものだったとか評しえないのは事実ですが、公平に言って、工藤さん(なんと、アセットマネジメント会社ということでしたから、立派な機関投資家です)の仕事もおよそ「プロフェッショナルとして恥ずかしくない」とは言いかねる代物のように思えます。 金利の動向に不安に駆られ、証券会社に電話を掛けてたまたま出た相手(それなりに信頼関係を築いてきた担当者というわけですらない、行きずりの人物)がその不安感に沿うコメントをしてみせると安易にそれに乗って売却という投資行動を起こす。まるで主体性が見受けられず、どこがプロフェッショナルでしょうか。
本作はもちろんフィクションの小説です。工藤さんも架空の人物ですし、証券会社の無責任な発言に乗って債券を売却して損失を出したアセットマネジメント会社も、少なくとも特定のモデルが存在するわけではないはずです。 ですが、実際に「特定の期待や不安ありき、特定の結論ありき」で相談を持ち掛けるような人は、大江英樹さんが「よくある話」として行動経済学の本に書く程度にはテンプレ的に存在する話なのだと思われます。 また、馬渕治好氏のセミナー(「投資の鉄人」系のもの)での発言でも、実際に結論ありきの質問をしてくる(意に沿わない回答だと怒り出す場合すらある)人には頻繁に出くわすということをよく聞きますし、一方で業者から聞かされたコメントに乗って取引をしてみたところがそのコメントに反する結果になって損失を出すや掌を返して「話が違うじゃないか」とクレームをつけてくる人もいるやに聞きます。
要するに、投資家に自分自身の判断軸が無いがゆえに無用の損失に繋がる失敗を仕出かすという、何の不思議も同情の余地もない話に過ぎないわけですが、一方でこのような経緯を経た投資家が自分の責任を棚に上げて証券会社にクレームをつけ始めると(本作ではそこまでは至っていませんが)、証券会社も不測の損害を被ったり、それを予防するためにリスク回避措置を講ずる結果色々と非効率になって、結局は投資家の便益低下に繋がる。そうした成り行きになることを危惧する声もあるわけですから、あざ笑ってばかりもいられません。
投資家として自分自身の資産運用に対して自分で判断を下し、責任を負えているのか。それとも他人の言うがまま主体性のない態度に終始しているのか。投資家としての姿勢について自省を促される作品のように思います。
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雑記
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[ 2019/02/26(火) 03:53 ]
[ 最終更新:2019/02/26(火) 03:53 ]
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