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海舟の中で資産設計を ver2.0
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。投資関係中心に語ります
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Author:安房
2008年10月、リーマンショックのさなかからインデックスファンド中心の資産運用開始。
以来7年、現在の運用資産残高1000万余(預金等含まず)。
投資関係中心に語ります

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「eMAXIS slimの半分の信託報酬」を掲げる日興Tracersオールカントリー登場。それは単なるバグ技なのか、業界改革の嚆矢となるのか
久しく当ブログの更新がない間にも、投資信託界ではコストの低下をはじめとする環境改善が留まるところを知らないのはご案内の通りです。

つい最近も、たわらノーロードシリーズが信託報酬最安値を更新する改定を発表し、それを受けてeMAXIS slimシリーズが更なる信託報酬引き下げを発表して最安値を奪い返すという値下げ合戦が繰り広げられ、投資家たちの喝采を呼びました。
そのあたりは(あちこちに記事はあると思いますが)以下の水瀬さんのブログ記事でご承知いただければと思います。
「たわらノーロード」シリーズの信託報酬を業界最低水準に引き下げ!
「eMAXIS Slim」シリーズ、信託報酬を業界最低水準に引き下げ!「たわらノーロード」に追いつき追い越す

この抗争を経て、全世界株式に投資するインデックスファンドeMAXIS slim全世界株式(オール・カントリー)は信託報酬0.1133%(受益者還元型適用前)まで下がってきたところです。
そして、この値下げ合戦の衝撃もひとまず落ち着いてきた頃になって、今、新たな衝撃を伴うファンド新設の報が流れています。
それが、日興アセットマネジメントの設定する下記のファンドです。
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)

このファンドは、eMAXIS slim全世界株式(オール・カントリー)<以下、「slimオルカン」>と同じくMSCI ACWIインデックスへの連動を目指すインデックスファンドで、信託報酬が何と0.05775%と表示されています。
前述の通りslimオルカンの信託報酬はようやく0.1133%まで下がってきたところですから、一挙に半分程度まで下げてきたことになります。
まさに驚天動地の下げ幅です。日興アセットマネジメントはまさかのゲームチェンジャーとなるのでしょうか。

私も最初にTracers全世界株式のEDINETを見たときは、「slimを圧倒する異次元の強敵が出てきた!?」と思いました。しかし、仔細に眺めてみますと、どうもそうとばかりは言い切れないようです。

信託報酬の表示には、その費用が何の業務の対価であるかの説明が付されています。その記述を、Tracers全世界株式のものとslimオルカンのものとを比較してみます。
Tracers全世界株式slimオルカン
委託会社委託した資金の運用の対価ファンドの運用・調査、受託会社への運用指図、基準価額の算出、目論見書等の作成等
販売会社運用報告書など各種書類の送付、口座内でのファンドの管理、購入後の情報提供などの対価交付運用報告書等各種書類の送付、顧客口座の管理、購入後の情報提供等
受託会社運用財産の管理、委託会社からの指図の実行の対価ファンドの財産の保管および管理、委託会社からの運用指図の実行等

見ての通り、信託報酬に対応する委託会社の業務の範囲が、Tracersの方が狭いことが分かります。具体的には、表の中で青字で記した業務が、slimオルカンでは信託報酬対応として存在してTracersには無い業務です。(販売会社と受託会社の業務は、両ファンドとも概ね同じと見えます)
そして、TracersのEDINETをよく見ますと、信託報酬の後に続く個所に【その他の手数料】として、計理業務や書類作成に関する費用が実費或いは見積額で信託報酬とは別に年率0.1%を限度に信託報酬から差し引かれることが書かれています。さらに、年率0.1%の枠外で発生する費用もあるようです。
【その他の費用】はslimオルカンにもありますが、それに該当する業務の範囲はTracersとは微妙に異なっています。簡単にまとめると、次の表のようになります。
Tracers信託報酬対応Tracersその他費用対応(0.1%枠内)Tracersその他費用対応(0.1%枠外)
slimオルカン信託報酬対応運用業務計理業務(設定・解約、決算等)
各種書類作成業務(目論見書、運用報告書、有価証券届出書etc)
slimオルカンその他費用対応監査人等の報酬信託財産に係る租税
立替金・借入金利息
売買委託手数料、保管費用
slimオルカン明記なし指数使用料
指数に関連する情報入手費用
クリアリング関連費用

こうしてみますと、Tracersの信託報酬が賄うのは委託会社の業務の本当にごく一部に過ぎず、slimオルカンとは範囲が異なり過ぎるため、単純な比較はできないことが分かります。
要は、slimオルカンが信託報酬で行なっている業務の何割かを、Tracersでは信託報酬とは別料金にしてしまっているということです。そういうからくりなら、それはTracersの信託報酬はslimより見かけ上低くなるはずです(業務が少ないのですから)。
信託報酬の数字だけを比較して、Tracersが圧倒的に安いと即断してしまうと、実態に比して過度にTracersを有利に評価してしまうことになりそうです。きちんと条件を揃えて(同じ業務に見合ったコスト同士に引き直して)比較すると、そこまで圧倒的な差はついていないかもしれません。

尤も、誤解されないように申し添えますと、表示上の基準の違いで惑わされるからといって、Tracers全世界株式が実際はslimオルカンより高コストで劣悪なファンドだということになるとは限らない点に注意が必要です。
仮に、Tracersの【その他費用】が上限値の0.1%掛かったとしたら、それでも信託報酬と合わせてコスト合計は0.15775%となります。slimオルカンの2022年4月25日決算における1万口当たりの費用明細によれば、当該決算において経費が0.170%掛かっているということですから、Tracersは十分slimオルカンと互角或いは優位に立てる可能性があります。
さらに言えば、0.1%という上限値は、ある程度余裕を持った設定なのではないかと思います(実際の経費が上限値を上回ってしまったらその差額分は委託会社の損失となってしまうわけですから、あまりぎりぎりの上限値設定はしないのではないでしょうか)
もしこの予想が当たっていて、実際にはその他費用が0.1%より低い水準しか掛からないとすれば、一層slimとの関係で有利になります。

Tracers全世界株式は、インデックスをきちんとトレースする運用さえできれば、コスト面においては(見かけの信託報酬差ほどの大差ではないとしても)十分に最優秀層に名を連ねることのできるファンドであることには間違いないと思われます。


さて、こうして信託報酬のカバーする範囲の違いが見た目上大きなインパクトに繋がる事例を目の当たりにすると、いろいろと考えさせられます。



バグ技利用の可能性


有価証券届出書、目論見書等においては、信託報酬やその他の(受益者が負担することになる)費用を記載し、さらにそれらの費用がいかなる役務の対価になるのかを明記するよう、「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」や「交付目論見書の作成に関する規則に関する細則(投資信託協会)」等において定められています。
これは、
「最終報告書」における、投資者が負担する手数料等と対価関係にあるサービスについて、「投資家のコスト意識を醸成し競争の促進を期待する観点から…中略…説明の充実を図ることが適当である」との提言を受けたものと考えられる。
いよいよ適用開始 投信制度改革 目論見書・運用報告書などの見直し(大和総研)
という趣旨によるものですが、どうも経費と役務の紐付けが明記されてさえいればそれで足りてしまうようで(コスト意識醸成という点からは尤もですが)、そもそもいかなる役務を信託報酬で賄うべきなのか?については何らの基準もないようです。
そこで、通常はslimオルカン程度の範囲が信託報酬の対価となる役務として掲げられることが多いと思いますが、あえて役務の範囲を狭く設定して、信託報酬もそれに見合う程度の低い水準に設定する、ということも問題はないということになります。(逆に、範囲を広く設定して信託報酬を高くする、ということも一応可能) もとより、狭く設定したことにより信託報酬の対価範囲からはじき出されてしまった役務に対しても、投資家負担の経費が事実存在する以上は、その他経費としてその存在及び(示すことが可能であれば)料率・金額を言及する必要はありますが、業務範囲の設定如何により信託報酬をある程度高くも低くもできてしまうというのは一種のバグのようにも考えられます。

もし、邪なことを考える委託会社がいたとしたら、信託報酬の対象役務を極端に狭く設定して、それに見合う極端に低い(見かけの)信託報酬を設定してアピールする、という一種のバグ技利用的なこともできなくはありません(実際には、殆どの役務と対応するコストをその他費用に逃がしているだけで、トータルのコスト水準は高いという仕掛け)。単純にこれだけでは運用報告書を見ればばれてしまいますから、投資家を惑わすにしてももう少し巧妙に練らないといけないでしょうが、インパクトを与えて勧誘を有利に進める効果はなくもなさそうです。

信託報酬の対価役務の設定を利用して、こういう姑息なことを考える運用会社が現れないことを祈るばかりです。

アットコストの観点からはむしろ良いこと?


とはいえ、その他費用に回して実費負担を明記する費目を増やすことは、あながち悪い事とも限りません。
むしろ、もしかしたらコスト開示の仕組みを劇的に改善する方向性も秘めているかもしれません。
slimオルカンをはじめ一般的なコスト開示方法だと、例えば指数関係の費用(使用料、関連情報料など)は信託報酬にもその他費用にも対価としての記載がなく、不透明感がありました(費用水準も、その出所も…委託会社が一旦取った信託報酬の一部が原資なのかもしれず、ファンドとは関係なしに委託会社が持っている独自財源を使っているのかもしれず…)。また、計理や書類作成といった運用自体とは異なる事務に関しても、運用業務と切り離して費用算定の対象とすることでコストがより見えやすくなります(信託報酬はあくまで運用に対する報酬、それ以外の事務処理は別に妥当な金額を、という割り切りができる結果、「運用の質に見合う信託報酬なのか」「事務の効率化ができているか」が投資家から見えやすくなる)

そう考えると、いわゆるアットコスト(投資家による適正なコスト負担)の考え方からすると、むしろTracersのように実費負担となるその他費用の範囲を広げ、信託報酬を運用行為のみの報酬にスリム化することは、コスト開示として可視性を高める方向性での改革の可能性を示しているのかもしれません。
投資信託内部でのコストが費目別にガラス張りになっていき、投資家の負担がその実費に近づく明朗会計になっていくのなら、歓迎すべき方向性といえそうです。

過渡による混乱は困る。できれば統一基準を


しかし、いくら新たな可能性を秘めた費用体系・開示方法だとはいっても、一部のファンドだけが新しいやり方(信託報酬の対価範囲を狭め、実費費目を増やす)になり、従来型のやり方(現在のslimのような)を続けるファンドと混在するようでは、やはり不都合が目に付いてしまいます。
ファンドによって信託報酬の対価となる範囲が異なり、それによって見かけの信託報酬水準が影響されるということになると、ファンド間の比較・評価が難しくなります。信託報酬率の差異が、コスト削減や受益者還元などの姿勢によるものなのか、単に対象役務の広狭によるものなのか、それぞれの寄与度合を考慮しながら投信を評価するのはなかなか一筋縄ではいかなさそうです。
対価業務範囲に起因する信託報酬水準の差を見て、実態以上に有利不利を認識してしまう投資家も増えそうです(さすがに、本当に優良誤認狙いの設定をする委託会社は現れないと信じたい)。

アットコストを追求する新しい方向性に行くなら行く、行かないなら行かない、いずれにせよ何らか統一的な基準(どの範囲の業務を信託報酬の対象役務とするべきなのか)を定め、商品間の比較可能性を確保することで投資家の適正な投資判断を容易にすることを検討するべきなのかもしれません。
金融庁、或いは投信協会などの業界団体には、前向きな検討を期待したいところです。
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